「こころに効く精神栄養学」(女子栄養大学出版部)の著者で精神栄養学の第一人者である帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授はストレスの多い現代社会についてこう指摘する。

「そもそもうつ病はストレスを要因に発症するわけです。たとえば仕事量が増えた。人間関係がうまくいかなくなった。競争、業績が第一の成果主義あるいは家庭内のストレスなど、多くの場合慢性的なストレスが発症の要因になることがわかっている」

「しかし、食事の変化による栄養不足、運動不足、ゲームやネット依存による夜型生活で睡眠がきちんととれないといった、気づきにくいストレスを“隠れストレス”と呼んでいますが、そういった自分の生活習慣が、ここ1、2年ではコロナ関連ストレスが伴ってそれらを助長しているといえます」

コロナ禍によるさらなる不安は、生活にさまざまな影響を及ぼしている。功刀主任教授が続ける。

「食事、運動、睡眠をきちんと整えるとこうした外からくるストレスを跳ね返すことにもつながります。コロナ禍におけるメンタルヘルスの問題は社会問題へとなっていく可能性が高い。たとえば、高齢者ではソーシャルディスタンスを保つために社会的交流が阻まれているどころか、面と向かって話すことによるソーシャルサポートの機会も奪われ、社会的孤立を招く恐れがあります。それによる認知症の発症リスクも高まります」

コロナ禍で大切なことは感染予防だけではないのだ。