精神栄養学の第一人者で帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授は食生活の改善とこころの問題の関係性についてこう話す。

「うつ病の人が休んだ結果、(その後に)糖尿病となったため栄養指導を受けて食生活が改善するとうつ病が治るということは実際にあるのです。うつ病では休息が第一ですが、度が過ぎると運動不足になって、中には糖尿病を併発する人がいます。食欲が低下したうつ病では体を動かすのがおっくうになることが多いためですが、糖尿病を治すとうつ病もよくなるというわけです」

功刀主任教授によると、インスリンには糖を代謝する働きのほかにも脳では細胞の発達を促したり細胞を保護する作用がある。糖尿病で細胞が糖をうまく利用できないと脳の一部で栄養不足になる。

「アルツハイマー病の発症に関係することが近年明らかになっています。インスリンには記憶機能を促進し、意欲や注意力の増強、食欲を抑えるといったはたらきがあり、アルツハイマー病の発症にかかわるアミロイドベータの沈着を減らす作用があるといわれています」(功刀主任教授)。

アメリカではアルツハイマー病を予防する食生活が盛んに強調されている。

「標準的なアメリカの食事はSAD(スタンダード・アメリカン・ダイエット=悲しい食事)だと、それを改める必要性が指摘されている。糖尿病とうつ病の関係についてもふたつの病気が単に合併しているというよりは共通のメカニズムを持っていると考えられています」