忙しいと甘いものが欲しくなる。精神栄養学に詳しい帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授はこう話す。

「これはストレス誘発性摂食と呼ばれる現象です。ストレスを強く感じると人はエネルギー摂取量が多くなり脂肪分の多い食事をとる傾向があります。アメリカでの大規模調査ではストレスを感じている度合いが高い人は脂肪分の多い食事に、加えてストレスが強い人は運動をする頻度が少なく、喫煙率も高かった」

強いストレスでは食欲が減ることもあるらしい。強い不安で視床下部のコルチコトロピン放出ホルモンが働いて食欲を抑えるからだ。

「一方、慢性的なストレスでは副腎から分泌されるコルチゾールが重要。コルチゾールはコルチコトロピン放出ホルモンの発現を抑制し食欲を高める物質の分泌をうながしたり、食欲を抑えるレプチンの濃度を下げることで食欲を高めると考えられます。ストレス時にコルチゾールが多く出る人はストレス誘発性過食になりやすい」と続ける。

慢性的にコルチゾールが多いと肥満細胞から出る炎症性物質によって脳に影響を及ぼすこともある。

「ストレスで甘いものや脂肪分の多い食事が食べたくなるのは、脳内の麻薬性物質などが関与しているといわれています。これらがストレスを軽減しコルチゾールを下げるのです。慢性的なストレスによって一種の依存症のようになり、肥満やメタボリック症候群につながるのです」と警鐘を鳴らす。