近年話題の「腸脳相関」。からだとこころをつなぐキーワードだ。精神栄養学に詳しい帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授はこう話す。

「腸内には1・5キロ、つまり1つの臓器ほどの重量をもった腸内細菌叢(そう)があり、いわゆる“善玉菌”や“悪玉菌”と脳機能とが関係しているのです。たとえば腸内に善玉菌が多いと腸の壁がしっかりして悪いものが入りにくくなる。また、迷走神経を刺激してストレス反応を和らげてくれるといったよい点があるのです」

腸内にある微生物が腸を介して脳に影響し、脳が過剰なストレスを受けると腸も過敏な反応を起こして不調となる。たとえば「過敏性腸症候群」などがその典型だ。

「過敏性腸症候群」は脳がストレスを感じると慢性的に下痢、便秘、腹痛などを繰り返す病気だ。緊張すると過敏に腸が反応し生活に支障となる人も多いとされている。

この「過敏性腸症候群」こそ腸内細菌との関わりは大きいとの指摘がある。功刀主任教授の話。

「腸内細菌叢の乱れが腹部症状となり、それがストレスとなってさらなる腸内細菌叢の乱れへとつながる悪循環をかたちづくります。過敏性腸症候群の患者ではビフィズス菌などの善玉菌が減っている、あるいは悪玉菌が増えているといった報告もあります」

結局のところ「ストレス」と「腸内細菌」はどちらも互いに影響を与えやすい関係にあって、どちらか一方だけで済むといった問題ではなさそうだ。