肺がんの85%を占める非小細胞がんの手術は、基本は右に3つ、左に2つある「肺葉(はいよう)」の中のがんのある一葉だけを切除する「肺葉切除術」。それで対応できないときは、片方の肺を全摘する「肺全摘術」になります。

このように大きく切除する手術だけではなく、早期の肺がんであれば、患者さんの身体に負担の少ない「縮小手術」があります。縮小手術は、肺の一葉よりも小さな単位でがんを取り除く手術です。

適応となるのは、一般的にがんが2センチ以下でリンパ節転移がないケース。加えて、CT画像に写るがんが「すりガラス状」に写っていることです。そのように写っているがんは、転移しにくいおとなしいタイプの「腺がん(肺がんの60%を占めている)」です。このタイプであれば、縮小手術を行っても肺葉切除術と同様の治療効果が得られるからです。

縮小手術には、「肺区域切除」と「肺部分切除」が行われています。肺区域切除の区域は右肺が10区域、左肺が8区域。がんのある区域だけを切除します。

ただ、がんが2つの区域にまたがっている場合は2区域を切除する必要があります。もうひとつの肺部分切除は、区域よりもさらに小さな切除になります。がんとその周辺部分を楔(くさび)状に切除します。この部分切除はがんが肺の深い部分ではなく、肺の表面にできたケースが適応です。

患者さんの身体に負担の少ない縮小手術は、日本の肺がん手術で行われているのは約2割強という状況です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)