肺がんの60%を占める「腺がん」には、CTに淡く写る「すりガラス状」の性質のおとなしいタイプのものもあります。これが1・5~2センチ程度であれば、手術も大きく変わってきます。

肺がんの標準手術は「肺葉切除術」で、肺の1葉を切除します。しかし、すりガラス状の小さくおとなしいがんの場合は、肺葉切除ほど大きく切除するのではなく、肺葉を構成している区域単位で切除する「縮小手術」でも根治可能なのでは、と認識されてきました。

すりガラス状で2センチ以下のがんであれば、縮小手術の1つである「区域切除」で対応することも多くなりました。

肺は右が上葉、中葉、下葉に、左は上葉、下葉に分かれています。その1葉を切除するのが肺葉切除術。縮小手術の区域切除の範囲は、葉によって異なります。例えば、右の上葉であれば3区域に分けられており、右の中葉であれば2区域、右の下葉は5区域です。

仮に、右肺の下葉を肺葉切除すると、5区域がなくなっていたのです。それが区域切除で3区域、もしくは2区域切除で対応できれば、1葉をなくすことがなくなります。

人間の臓器にはいらないものはありません。少しでも多く肺を残すことができれば、呼吸機能の温存になります。機能の温存は、術後の生活を考えると極めて重要なことです。縮小手術には、この区域切除よりさらに小さく切除する「部分切除」も行われています。その部分切除については、次回に。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)