肺がんの非小細胞がん(腺がん、扁平(へんぺい)上皮がん、大細胞がん)に使われる薬は「抗がん剤」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の3種類。今回は分子標的薬に注目します。

分子標的薬は特定の遺伝子変異のあるがん細胞に対し、その遺伝子変異を目標に攻撃してがん細胞が増殖できないようにします。そのため、遺伝子変異にあう分子標的薬を使う必要があります。

今日、遺伝子変異に使うことができる分子標的薬は「EGFR遺伝子変異に使うEGFR阻害薬」「ROS1(ロスワン)遺伝子変異に使うROS1阻害薬」「ALK(アルク)遺伝子変異に使うALK阻害薬」など7種類。ステージ4で薬物治療のみの患者さんに対しては、それらの薬が適応になるか否かを知るために「遺伝子検査(遺伝子パネル検査)」を行います。

この遺伝子検査で当てはまる薬があるとそれが使われます。ただ、残念ながら当てはまらない患者さんの方が多いのが現状です。当てはまるのは約40%程度です。

「期待して検査を受けたのにどの分子標的薬もダメ」では、患者さんの落胆は大きい。ただ、毎年のように新しい遺伝子変異に効く分子標的薬が出てきています。ここに大きな希望があります。

分子標的薬はほとんどが飲み薬。毎日1~2回服用し、耐性ができて薬が効かなくなるまで飲み続けます。大きな効果が出ても、途中で薬をやめることはできません。

私の患者さんの中には、分子標的薬を10年以上服用している方もいらっしゃいます。ただ、そういう方はまれですが、分子標的薬が適用になると、患者さんがステージ4でも4、5年服用されている方がいらっしゃいます。ステージ4の方々にとって、これはとても大きな幸せだと思います。(取材=医学ジャーナリスト松井宏夫)