肺がんの非小細胞がん(腺がん、扁平=へんぺい=上皮がん、大細胞がん)がステージ4で、薬物治療のみの患者さんには「遺伝子検査(遺伝子パネル検査)」が行われます。これでがん細胞に遺伝子変異があり、適合する分子標的薬があるとその薬での治療になります。

分子標的薬での治療は有効性が高い。私の患者さんで、骨にたくさんがんが転移していた状態で受診された方がいらっしゃいます。このまま放置すると1カ月持たない状態。ただ、分子標的薬が使えたのです。分子標的薬が効いて5年を超えて生存されています。そういう方々は「私は奇跡ですか?」と口にされますが、分子標的薬ではあり得る話です。

もちろん、分子標的薬は薬なので副作用はありますが、がん細胞の特定の遺伝子変異などを狙って攻撃するため、正常細胞へのダメージは全身に及ぶことはなく少ない。分子標的薬に共通している副作用は「薬剤性肺障害」で、「息切れ」「せき」「熱」など。それ以外は、適用となった分子標的薬によって異なります。例えば、もっとも適用者が多い「EGFR遺伝子変異」に用いられる「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬」は、「湿疹」「下痢」などがあります。副作用が出た場合はすぐに連絡をもらっています。

分子標的薬が効いている間は問題ないのですが、耐性ができて分子標的薬が効かなくなると、あとは抗がん剤での対応に-。こうなると厳しい状況になります。しかし、分子標的薬がなかったころと比べると、生存期間は雲泥の差です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)