がんの中で死亡者数が最も多い「肺がん」。その危険因子とはっきりわかっているのは「喫煙(たばこ)」。これは肺がんだけではありません。食道がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、喉頭がん、咽頭がん、ぼうこうがんなどさまざまな臓器のがん死亡リスクを高めます。

このリスクをなくすには「禁煙」が一番。例えば、たばこ20本を毎日20年吸っていたとします。「これだけ吸ってきたのだから禁煙してもリスクには関係ないだろう」と思う方もいます。でも今、禁煙するとそれ以上肺がんになるリスクは増えません。ただ、たばこに含まれるニコチンには依存性があるため、なかなかやめられないのも事実です。

そういう場合は、禁煙治療を医療機関で受けましょう。禁煙治療は「習慣」ではなく、「依存症」として治療をするので保険適用。12週間に5回の診療を受け、依存度に合わせた貼り薬や飲み薬、禁煙指導やカウンセリングも行われます。

喫煙者だけではなく、たばこを吸わない50~70代の女性も肺がんになることがあります。まだ、解明はされていませんが、肺がんの原因はたばこだけではないということです。

このような女性の肺がんは肺の隅っこに2~3センチの淡い影で写るおとなしいタイプの「腺がん」。これはCTでは写っても胸部エックス線では写りません。

そのため、早期発見にはCT検査が重要。45歳でCT検査を受け、50歳でもう1回。それで問題がなければ、その後は2~3年に1回受けるようにすると、肺がんになっても早期発見が可能です。人間ドックなどでCT検査を受けるのは、自分の身体を守る点で大変価値のあることだと思います。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)(おわり)

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