生活習慣病という言葉は常に耳に入ってきます。慣れ親しんでいる言葉ですが、実はこの生活習慣病が動脈硬化を進行させるのです。その動脈硬化とは血管の壁が硬くなったり、厚くなったりすることで血管の構造に変化が生じ、血管としての働きが果たせなくなる状態のことです。

「進行させる」と書いたのには意味があります。実は、動脈硬化は0歳のころから初期の病変が確認されているのです。そして、10歳のころから動脈硬化は進行し、30歳を迎えるころには明らかな病変が現れます。つまり、動脈硬化は人間が生きていくうえで避けることができない血管の変化なのです。

生活習慣が理想的な人であっても、動脈硬化は起こってくるということで、決して止められません。だからと言って、好き勝手な生活でも同じというわけではありません。メタボなどが原因となって、生活習慣病の「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの危険因子が加わると、動脈硬化は加速度的に進行します。その結果、40代、50代から心臓病や脳卒中を引き起こしてしまう人々も出てきてしまうのです。

事実、2020年の日本人の死亡原因と死亡者数は、<1>「がん」約38万人<2>「心疾患」約21万人<3>「老衰」約13万人<4>「脳血管疾患」約10万人で、心臓病と脳卒中は<2>番目と<4>番目になっているのが現状です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆横山啓太郎(よこやま・けいたろう)1958年(昭33)生まれ。63歳。慈恵医大晴海トリトンクリニック所長。東京慈恵会医科大学卒。日本腎臓学会、日本透析学会でガイドライン策定の中心的な役割を演じ、薬物療法の効果と限界を痛感し、2016年(平28)に日本の大学病院で初めての行動変容外来設立。新しい試みを「健康をマネジメントする」などの著書で発信し、薬のみに頼らない健康メソッドを科学的に体系化している。21年から東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授も兼務。