■心原性脳梗塞が怖い

心房細動のいちばんのリスクは、放っておくと心房内で血液が滞って血栓ができてしまうことです。その血栓が脳に飛んだ場合、脳梗塞を起こします。医学的には、心原性脳塞栓(そくせん)症といいます。

80歳で3度目のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんも心房細動から脳梗塞になりかかったものの、血栓を溶かす治療と心房細動の治療で、後遺症は残らずに済んだといわれています。

■ぼくが治療を受け入れた理由

ぼくとしては、85歳になっても、90歳になってもスキーを楽しみたい。ジャズを聴きに、自分の足でライブハウスに通いたい。イラクの難民キャンプで暮らしている子どもたちの診察も続けたいと思っています。だから、脳梗塞のリスクがあるなら、そのリスクをできるだけ低く抑えておきたいと考えています。

この数年間、不整脈を抑える薬や血栓をできにくくする薬を飲んでいました。しかし、次第に心房細動の発作が多くなり、ついにカテーテル・アブレーションを受けることになりました。

医療は、ただ病気があるから治療するわけじゃない。1人1人生きたい人生があり、そのうえで何のために治療をするのかが大事だと、ぼくは思っています。

■検査も手術も嫌い

ぼくは検査もあまり好きではありません。ましてや、手術はもっと嫌い。カメラを使った治療やカテーテル治療なら、「ピンピンひらり」のために受けようと思ったのです。そのことは、「ピンピン、ひらり。鎌田式しなやか老活術」(小学館新書)に書きました。