<4>歯周病は完治しない病

民間で実施されているアンケートなどに目を通すと、歯科医院は痛くなってから行く場所というスタンスの方もまだまだ少なくないようです。

歯周病という単語を知らない大人はいないのでは、といえるほど身近な疾患のはずですが、一方で「クリニックに行けばすぐに治る病気」と誤解している患者さんにも日々遭遇します。

病因論や治療法について正しく理解する機会がなかったのだと思いますし、私がこうした記事を書く仕事に就いたのも、目にする皆さんが自分の体と向き合うきっかけになればと感じたことがきっかけです。「どうして歯周病が完治できないのか」という理由のひとつは、歯周病菌が常在菌の一種であるからです。

私たちの体には皮膚や消化管、口腔(こうくう)などを中心にたくさんの細菌が生息しており、よく耳にする「善玉菌」は免疫機能や代謝などに役立つプラスの影響を与え、反対に「悪玉菌」はマイナスに働く菌を指します。

常在菌の大半はどちらでもないか、あるいはプラスになる菌が多いとされています。最新の研究データによると常在菌の数は40兆だそうで、人体を構成する細胞の数よりも多いというのですから驚きです。こうした常在菌は、自らが生き延びるために寄生する人間の体とのバランスを取りながら存在しています。

共存関係が保たれていれば歯周病のような感染症は起きないのですが、ひとたびその調和が崩れると病気が発症します。常在菌の病原性が強くなるタイミングや、宿主である人体の抵抗力や免疫機能が弱くなったときがそうです。歯周病菌は常在菌である以上、口の外に完全に追いやることができません。適切な治療によっていったん勢力が弱まったとしても、また元の状態に近づく生活をしていると再び発症する可能性が高いといえます。