コロナと過ごすこの2年半弱、生活リズムの変化や感染対策の徹底など、これまで過ごしてきた時間とは異なる環境に身を置くことが増えました。無意識のうちにストレスを感じ、それが口の中に如実に現れるという患者さんも多いです。

寝ている間の歯ぎしりや食いしばりは昼間のストレスの代償などとも言われていますが、自分の意思では防ぎようがない現象なのであまり神経質にならなくても大丈夫です。ただ、就寝中は歯に直接負荷がかからないようにマウスピースを装着する、起きている間は歯と歯が接触しないように心がける、といった「歯へのいたわり」を持っていただけたらと思います。

過度な応力がかかると歯の結晶構造が破壊され、歯頚部(けいぶ=歯のくびれの部分)のエナメル質や象牙質がはじけ飛ぶことでくさび状のへこみが生じます。

表面が薄くなれば歯髄(歯の神経)までの距離が近くなりますから、知覚過敏を起こす可能性が高くなります。象牙質がむき出しになるとすぐに症状が出るわけではなく、通常は唾液に含まれるカルシウムイオンやリン酸イオンといったミネラル成分の働きで結晶構造が修復されて事なきを得ます。

ところがブラッシングが不十分であれば、停滞したプラーク(歯垢=しこう)から生じた酸が結晶構造を溶かしてしまい、外部からの刺激が伝わりやすくなります。また、酸っぱい食品を好んで摂取しているという方にも知覚過敏が生じやすいです。レモンやグレープフルーツを欠かさない、美容と健康のためにお酢を飲んでいるといった女性も結構いるのですが、回数が頻繁であったり、だらだら飲んでいるような習慣があると酸性状態が長く続き歯が溶けてしまいます。時間や回数を決める、直後に水でゆすぎ口内を中和するといった心がけで防げます。