日本の医療は保険適応にならないと治療を受ける患者が増えることはありません。

ロボット手術(ロボット支援下手術)で最初に保険適応となったのは「前立腺がん」で12年4月。16年4月には「腎臓がん」。そして、18年4月には次の疾患が一挙に適応になりました。

その疾患とは「縦隔悪性腫瘍」「縦隔良性腫瘍」「肺がん」「食道がん」「胃がん」「直腸がん」「ぼうこうがん」「子宮体がん」、そして、待ちに待った「心臓弁膜症」です。心臓弁膜症に対する「弁形成術」が入ったのです。

心臓弁膜症の手術には「弁形成術」と「弁置換術」とがあります。弁形成術は患者さん自身の弁を修復して使う方法なので、術後に血液を固まりにくくする薬は服用する必要はありません。一方、弁置換術は弁を切り取って人工弁に置き換える手術。人工弁には生体弁と機械弁があります。弁形成術が難しい場合は、弁置換術を行うことになります。

この保険適応によって、心臓ロボット手術を受ける患者さんの数が激増。それまでは、心臓ロボット手術を受けるには300万円必要でした。それでも、コンスタントに年間45~50人の患者さんが手術を受けられていました。それが保険適応になるや、心臓ロボット手術数は18年が約3倍の150例、23年は250例にまで増えたのです。

私たち心臓ロボット手術の外科医だけではなく、「身体に優しい手術」とあって、それを知る患者さんたちも待ちに待っていたのです。それが手術数としてはっきり出てきました。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)