日本で心臓ロボット手術(心臓ロボット支援下手術=ダヴィンチ)を行っている病院は、広がりは遅いものの現在27病院に――。

それらの病院で行われている心臓ロボット手術は、「僧帽弁閉鎖不全症」と「三尖弁閉鎖不全症」の疾患に対してで、手術方法は「弁形成術」。それは、保険適用だからです。

なぜ僧帽弁形成術が保険適用なのか。患者さんの中には疑問に思っている方もいらっしゃると思います。私も、「なぜ弁形成術が保険適用なのか」についてはよくわかりませんが、私なりの考えがあります。第1は「弁形成術の手術数と手術の安全性」です。

僧帽弁閉鎖不全症の手術では、弁を取り換える弁置換術のケースが少なく、弁の壊れているところを患者さん自身の組織を使って治す弁形成術が多いのです。心臓ロボット手術が保険適用になった18年の年間手術数を取り上げてみます。

僧帽弁閉鎖不全症の手術は4894件。その手術で弁置換術が1350件、残りの3544件が弁形成術。弁形成術が約2・6倍の多さです。また、僧帽弁プラス三尖弁の手術を僧帽弁単独の手術と合わせると、僧帽弁形成術は5981件行われていました。そして、僧帽弁置換術の死亡率は4・3%。一方、僧帽弁形成術の死亡率は1%。僧帽弁形成術は弁置換術と比べると手術数が多いのに加え、安全な手術と言えます。それで、心臓ロボット手術の適用になったのだと思います。

加えて、第2の考えがあります。それは次回に――。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)