乳がんの手術には「乳房温存手術」と「乳房切除術」があります。前回は温存手術を紹介しましたので、今回は切除術について説明します。

切除術となるのは、乳がんが3センチを超えていて温存手術の適応とならないケース。この場合は、乳房すべてを切除することになります。このほか、乳がんは小さくても乳房の中にがんが複数できていると、やはり切除術になります。

最近は、乳頭・乳輪を残す手術も選択肢として出てきています。がんが乳頭から離れた場所にできている場合は乳頭・乳輪を残すことができ、乳房の中だけをくりぬくという手術が可能なこともあります。逆に、がんの広がり具合によっては、乳頭も切除しないといけない場合もありますので、選択肢は状況によっていろいろです。

また、しこり自体は小さくても、がんが乳管にそって乳頭まで伸びているということもあります。がんが広がっているので、この場合は、温存手術は適応になりませんので、切除術となります。

このほか、切除術となるケースが多いのは、遺伝性乳がんの患者さんです。たとえ、がんが小さい段階で発見されたとしても、温存術で乳房を残してしまうと、そもそも遺伝性乳がんの方は乳がんになりやすい体質なので、残した乳房に別の新しい乳がんができる可能性が高いのです。再び手術や抗がん薬が必要になる可能性を考えると、温存できるとしても全摘をし、希望があれば乳房再建を行うことをお勧めしています。ただし、切除術と温存手術では生存率に差はないので、絶対に温存術を選んではいけない、というわけではありません。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)