乳がんの薬物療法で使われる薬は大きく分けると「ホルモン薬」「抗がん薬」「分子標的薬」の3つ。前回までにそれぞれの薬の特性を紹介しました。副作用についても触れましたが、今回は、もう少し深掘りしたいと思います。

副作用といえば抗がん薬。「吐き気」「脱毛」「白血球の減少」などは代表的です。このほか薬の種類によっては「手足のしびれ」があります。手では「手先がしびれて包丁が握りづらい」、足では「つまずきやすくなる」といったことが起こります。

抗がん薬の治療が終わると、副作用は次第に良くなります。ところが、手足のしびれが強く出てしまった患者さんの場合、何年たってもしびれが消失しないこともあります。歩くと足に痛みがあったりして、「石の上を歩いているかのようです」という患者さんもいます。しびれに対して有効な薬などの対策が出てほしい、と思っています。

現状のしびれ対策としては漢方薬を使う、あるいは服のボタンがかけにくいなどの副作用が出た場合は、抗がん薬の量や投与間隔を調整することで対応しています。しびれは長く残ることがあるので、「たいした副作用ではない」と軽く考えず、我慢しないで早く主治医に相談しましょう。

私も患者さんから相談を受けることがよくあります。「これくらいどうってことはありません。まだまだ頑張ります」という方がいらっしゃいます。乳がんを治したい一心なのです。現時点で抗がん薬の副作用として一番難しいのは、この“しびれ”だと思っています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)