睡眠負債は、健康にさまざまな害をもたらします。よく知られているのが肥満です。

<肥満になりやすい>

睡眠時間が短いと肥満になりやすいという論文はたくさん出ています。睡眠時間が6時間以下になると、レプチンという食欲抑制ホルモンの分泌が低下し、同時に、食欲増進ホルモンのグレリンが増加することがわかっています。その結果、食欲が高まり、肥満になりやすくなるのです。

睡眠時間が短くなるという危機に対する、体の防御作用なのでしょう。

<高血圧の原因にも>

また、睡眠時間が短いと高血圧になりやすくなります。睡眠時間が7~8時間の人に比べて、5時間以下の人は1・32倍高血圧になりやすいという結果が報告されています。

<糖尿病患者さんは不眠症の人が多い>

糖尿病の患者さんの実態調査をみると、糖尿病の人の37%が何らかの不眠を訴えています。不眠と糖尿病は関係があるのです。

言い換えるなら、十分な睡眠を確保し、質のいい睡眠をとれるようにすれば、肥満や高血圧、糖尿病を改善できる可能性があるということです。

その他にも睡眠負債は、免疫力の低下、倦怠(けんたい)感、疲労感、認知力や判断力の低下、抑うつ状態など、体と心に不調を来すことが知られています。生活習慣病予防のうえでも、健康づくりのうえでも、睡眠はとても大事ですね。(医師で作家・鎌田實)