先生、びっくりするぐらいよく聞こえます。

Aさんからの喜びの電話でした。エクソソーム(幹細胞培養上清液)の難聴治療を行って3日目のことです。Aさんは67歳で手広く事業を行っている方で、従業員100人を超える会社を経営しています。耳が遠くなり仕事を引退することも考えなければならないと思い始めていました。商談中に何度も聞き返すことが多くなり、近所の耳鼻科クリニックを受診したところ、補聴器をつけなければならないと医師に告げられました。様子を見ていましたが、コロナ禍にもなりマスク越しの会話に自信を持てなくなって、人と接することが嫌になっていたのです。

そこで友人の紹介で当院に来られてすぐに治療を受ける決心をされました。聴音検査を受け、早速エクソソーム治療を受けられました。鼓膜や中耳から穿刺(せんし)し内耳にエクソソームを投与しますので、若い方や初期の難聴の方は痛みがあります。そして通常は2週間程度で検査し次の処置を考えます。しかし、Aさんはわずか3日後にはエクソソームを投与した右耳にはっきりとした改善を感じられ、冒頭の喜びの電話になりました。

2週間後に検査をしたところ、はっきりとした改善が確認できましたので左耳にエクソソーム治療を行い同様の改善が見られました。それから2カ月後Aさんから少し耳が遠くなった感じがするとの連絡が入りました。検査をしたところ難聴の結果が出たので右耳の2回目の治療を行いました。

 

◆都筑俊寛(つづく・としひろ) コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京院長、フランス国立神経学研究所客員教授、医学博士、日本耳鼻咽喉科認定専門医、01年よりいびき、鼻アレルギーに対するレーザー日帰り治療に特化を始め、レーザー日帰りいびき手術の総件数は2万4000例を超える。現在はエクソソームを活用した老人性難聴の治療や難病の予防、QOL改善にも取り組んでいる。