今年3月、肥満治療薬として「GLP-1受容体作動薬」が承認された。週1回の注射で、食欲や胃の働きが抑えられ、体重が減っていくという。しかし、まだ販売されていない。他の「GLP-1受容体作動薬」は、2型糖尿病の治療薬として10年以上も前に承認された。食後に血糖値が上がったときに、血糖値をコントロールするインスリンの分泌を促す作用があり、体重が減る効果もある。そこで美容目的で使用する人もいて大問題となった。

「GLP-1受容体作動薬は、従来の糖尿病薬のように効きすぎて低血糖を起こすようなリスクが少ないので、近年、糖尿病の治療で幅広く使用されています。同時に体重減少効果もあり、肥満治療薬としても承認されました」と、東邦大学医療センター大橋病院糖尿病・代謝・内分泌内科の上芝元教授は説明する。

2型糖尿病の治療薬では、「SGLT2阻害薬」が、やはり、2023年に慢性心不全に対する治療薬として承認された。慢性心不全は、心臓の機能が低下した状態のことである。

「SGLT2阻害薬は、もともと余分な糖を尿中に排出する働きがあり、体内の水分も排出し尿量も増えます。慢性心不全は心臓のポンプ機能が落ち体内に水分がたまりやすく、SGLT2阻害薬は余分な水分を排出することで効果が得られます」

血糖値をコントロールするために開発された薬が、普及すると同時に別の病気改善の福音につながった。つまり、適切な薬の使用により2型糖尿病はもとより、肥満なども一緒に改善できる可能性がある。高血糖が続くようならば、糖尿病治療に詳しい医師にまず相談を。