脳の疾患に対して、頭を切らずに治療する定位放射線治療「ガンマナイフ」のすばらしさ、魅力を、ご理解いただけたかと思います。私は“患者さんの人生を手術する”と考えてガンマナイフ治療を行っています。

まだ知らない人もいるガンマナイフですが、かなり歴史のある治療です。ガンマナイフは、1951年にスウェーデン人の脳神経外科医レクセル教授が開発しました。

その時は「いかに頭を切らずに『三叉(さんさ)神経痛』を治すか」が目的でした。当時はエックス線を使ってのガンマナイフ開発でしたが、そのエックス線を1968年にコバルトに代えたものを開発して世界に広めました。それが、ガンマナイフです。脳腫瘍だけにガンマ線(放射線)をピンポイントに当てることができるようになったのです。それにより、三叉神経痛の痛み治療よりも「脳腫瘍」「脳動静脈奇形(AVM)」の治療オプションとして世界中に知られるようになりました。日本が導入したのは1990年で、東京大学病院に1号機が入りました。私たちの東京女子医科大学病院には、国内10台目として1993年に導入されました。日本でのガンマナイフ治療開始以来、34年の歴史を刻んだことになります。

現在、日本でのガンマナイフ稼働施設は51施設で、これはフランスなどよりも多く、世界のトップクラスです。

そして、その34年の間にもどんどんバージョンアップしたガンマナイフ機器が登場し、2022年には最新機器「アイコン」が導入されました。頭をピンで固定するしかできなかったのが、マスクでも固定できるようになり、適応疾患も広がり身体に優しくなりました。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)