「髄膜腫」は頭蓋骨の内側にあって脳を包んでいる膜にできる良性腫瘍のことです。まずは手術を考え、状況に応じてガンマナイフの適応が決まります。そして、ガンマナイフ適応での成功率は97%という状況です。一方で、その中には後遺症の出る人が10%程度あります。だからこそ、手術・ガンマナイフ双方の意見を聞いて決めることが重要です。

そういう中で、ほぼ手術ができない髄膜腫があります。それが海綿静脈洞内腫瘍で、そこにかなりの割合で髄膜腫ができます。海綿静脈洞は、頭蓋骨内の目の真後ろあたりにあり、海綿状の内腔構造を持った、まるで静脈の土管のようなものです。ここに腫瘍ができると多くの脳神経を傷害し、眼球運動障害を引き起こします。開頭手術の際、少しでも穴をあけてしまうと出血が止まらなくなり、血の海の中での操作により眼球運動障害が引き起こされる例は少なくありません。この部位の手術ができる脳神経外科医は名医の中の名医です。

逆に言えば、そこにできる髄膜腫は、ガンマナイフが非常に重要な役割を担っています。ガンマナイフでは、0・1ミリ単位で神経を外して照射するので、ここ20年はガンマナイフでの合併症はほぼありません。

また、手術が難しい「テント下病変(大脳と小脳を分けるところをテントと言い、それより下にある病変)」であっても、基本手術を第一選択です。一方で、私たち東京女子医大では、1人1人の患者さんごとに全体カンファレンスで討議しています。どのように腫瘍を治療していくか、統合治療戦略をたてるのです。野球に例えると、手術が先発投手なら、まさにガンマナイフはクローザーです。特にテント下病変ではそのように緻密な治療戦略が必要なのです。私たちは、これが患者さんを救う道と考えて対応しています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)