心房粗動は回帰性頻拍の典型です。回帰とは、ひと回りして元に戻ることです。心房と心室の間には血液を流す調節弁があり、右心房と右心室間のを三尖(さんせん)弁と呼びます。三尖弁は輪状の心筋でできている台座に乗っていて、心臓の拍動に合わせて開閉しています。典型的な心房粗動は、いったん電気が三尖弁台座部分に入り込み旋回(回帰)することで生じます。

心筋を流れる電気の速度は秒速1メートルなので、台座を1分間に200~300回旋回することになります。この電気がそのまま全て心室に伝われば、心臓は一瞬にして心室細動となって死んでしまいます。幸いなことに刺激伝導系がせき止めてくれるのです。刺激伝導系は心房内で秒速1メートル、心室では秒速4メートルと高速ですが、心房と心室の間は秒速5センチしかなく、高性能な整流能力を発揮してくれているのです。

それでも心房粗動では心拍数は1分間150回くらいなり、動悸(どうき)や息切れ、時として心不全が悪化してしまいます。薬を使って脈拍数のコントロールをしたり心房粗動を抑えようとしますが根治はできません。時として、胸にパッチを貼ってAEDのように電気ショックをかけることがありますが、一時的な治療です。根治を目指してのカテーテルアブレーション治療を考慮します。

心房粗動の原因を見極めることが重要です。高血圧などの生活習慣病が背景にあることが多く、心房筋に軽度の肥大やスジ肉のように繊維化が進行しているなど、広い意味での心臓の傷害があることで生じやすくなります。また心筋症や心臓手術の既往など、心臓の傷が原因となることもあります。カテーテルアブレーションによる心房粗動の根治率は一般に高く安全です。