大谷は私たちの期待をはるかに上回る素晴らしいバッティングを見せてくれた。どこまでも広がる夢を抱かせてくれる。
42号を放った打撃フォームを、連続写真でじっくりみた。言うことのないフォームだ。グリップの位置がボールとしっかり距離が取れている。準備ができているということで、恵まれた体のサイズもあり、左翼へホームランも打てる。フォームに改善点はない。
大谷が今年からさらにチェンジして、どう進化できるかと言えば、打率だ。私は打率を上げればさらに大きな打者になると確信している。
打者というのはどういうバッティングを目指すかという根本的な部分が非常に大切だ。例えば、私は内角球を強く振って、強い打球を打つことを目指していた。それを実践した中で打球が上がればホームランになり、ライナーであれば長打となった。
そしてインパクトの瞬間、わずかにずれればゴロになり、こすってしまえば凡打になった。私はゴロになったとしても一、二塁間を破れば、心の中で「良しとしよう」と考えた。しかし、こすった凡打ならば「どこに原因があったのか」と、タイミングの取り方、スイングを見つめ直した。強い打球を打つことの延長線がホームランという考え方だった。
大谷はどうか。私が画面から感じる大谷という打者は、仕留めればホームランになったボールに詰まってヒットになっても「よしよし」と感じているように映った。「ああ、もったいない」と感じるか、ヒットになれば打点を稼げることもあり「よしよし」と考えられるか。大谷はホームランを狙いながらヒットを稼ぐ、そういうタイプと感じる。
打者は詰まることを嫌がる。仕留め損なったことが印象として残るからだが、大谷はその点はおおらかというか、神経質には見えない。メンタル面でのたくましさを感じる。長距離打者は泳がされることを嫌がるものだが、大谷は泳がされないことを念頭に、詰まることにはそれほど神経をとがらせることなく、シーズンを送ることができる。
打ち気にはやってしまっていると感じた時には、率を頭に入れることができればボール球に手を出しがちな状況などを打開できる。ホームランにはできないが、しっかりヒットゾーンに打てるポイントをつくっておけば、その技術が大谷を助けることになる。
相手バッテリーはさらに大谷を攻めづらくなるからだ。1発は避けたいが、ヒットでピンチは広げたくないため、少々無理をしてでも攻めざるを得なくなる。結果としてチャンスは広がる。この考えをしっかり身に付ければ、ヒットの確率はおのずと上がる。
加えて球団がどういう補強をするかも重要だ。トラウト、レンドン、アップトンらが離脱したシーズン終盤、大谷は極端に歩かされた。これは予想されたことで、ポストシーズンを目指すチームなら、大谷との勝負を避けるのは普通のことだ。大谷以外に強打者がいれば状況は変わっただろう。言い換えれば、今季の大谷は孤軍奮闘の中、ホームラン王争いを強いられた。とても厳しい環境だったといえる。
大谷にはさらに夢を託したい。率を求め、そして今季と同じスケールの活躍も、彼ならば楽々とかなえてくれるのではないか。私には大谷のポテンシャルがどのスケールに収まるのか見えない。どこまでも可能性が広がる夢の強打者という感じか。
シーズンが終わり「楽しかった」というコメントにも、大谷のスケール感が出ていた。投打にフル回転し、疲れや達成感で満たされているかと言えば、過酷なシーズンを楽しんだと明るく言ってのける。
来季は限りなく3割に肉薄し、ホームランも、盗塁も、打点も、そして先発としての勝利数も夢を見たい。そんな期待をさせてくれる選手がいることに幸せを感じる。どこまでも夢が広がる大谷ワールドを、来年もファンに届けてほしい。(日刊スポーツ評論家)






