「めりはり」という日本語がある。雅楽尺八で音の高低や強弱をつける「減り浮り(めりかり)」から転じたという。デジタル大辞泉に「<1>ゆるむことと張ること<2>物事の強弱などをはっきりさせること」と出ている。交流戦が終わった。山賊打線を擁するパ・リーグ首位西武の嶋重宣打撃コーチと話していて、そんな言葉が脳裏をよぎった。

 パ・リーグは下位打線の打者でも強く振り切ってくる。嶋コーチは「打球が速い方が(野手の)間を抜ける。強く打つこと。弱いゴロで間、抜けるか?」と言う。6月初旬、メットライフドームで西武対阪神戦を取材。秋山の左翼ポール際へのアーチや山川の1試合2本塁打を目の当たりにした。強く振り切れ-。辻発彦監督の方針だという。

 嶋コーチは続ける。「あとは角度の問題もあるけどね。振るなら、どんな球でも振り切れと。振り始めたなら最後まで振り切れと。ただね、練習では長い時間持たない」。西武の打撃練習。秋山&山川、メヒア&浅村がペアを組んで打っていた。5、6球で交代。これを4、5回のサイクルで回す。交互に打つスタイルは、選手の希望だ。球を振り切るための工夫だろう。

ティー打撃をする西武山川穂高(2018年3月29日撮影)
ティー打撃をする西武山川穂高(2018年3月29日撮影)

 山川は豪快だ。打つ形より、とにかくインパクトの瞬間、体ごと球にぶつけているように見える。おおざっぱにも映るが、実は入念だ。「強く振るのに細かさはいらない。でも、形はティー打撃でしっかり体に覚え込ませる。打席に立って無意識にできるように」と嶋コーチ。12球団トップのチーム総得点、打率を誇る強打の一端に触れた。

金本知憲監督(右)が見守る中、打撃練習を行う大山悠輔(2018年4月23日撮影)
金本知憲監督(右)が見守る中、打撃練習を行う大山悠輔(2018年4月23日撮影)

 普段取材する阪神は、2人1組で4分半から5分近く、左右投手をそれぞれぶっ通しで打つスタイルだ。分量はトータルで50球ほどで、西武とあまり変わらない。球団関係者は「振る力をつけるためという意図もある」と話す。成長途上の若手が多いメンバー構成でシーズン中も強化を重んじる方法だろう。アプローチは千差万別なのだ。余談だが、星野監督体制で優勝した03年は3分で回る超短時間だったという。前半戦は貧打が続くがリーグ戦再開で快音を奏でられるか。息をのむようなド迫力のフルスイングを心待ちにしたい。【阪神担当 酒井俊作】