矢野新監督は中途半端が嫌いなタイプ。現役時代は守りからベンチに帰ってくると、その時投げている投手と配球についてこと細かに話し合っていた。「あの球はもっと思い切ってインサイドを攻めて来てもいいぞ」「あの時要求したボール球は、次のアウトサイドに投げる球を生かすためやからな」などなど、もう談話の中身までは記憶にないが、意図ある配球の徹底には、違いない。いかにも矢野らしい一面だ。

半面、はじけるのも早い。現役時代はサヨナラ勝ちになろうものなら、ヒーロー目がけて一番先にベンチを飛び出して、手荒い祝福をして大喜びしていた。03年、甲子園のベンチで他球団の結果待ちをしていた時も、リーグ優勝が決まった瞬間、真っ先に飛び出したのが矢野と桧山。マウンドへ一直線に走るユーモラスな姿も、矢野である。【元阪神担当 松井清員】