ドーム内のコンコースに飾られた昨年のリーグチャンピオンペナントの前で足を止めたソフトバンク王球団会長は、気を引き締めるように言った。

「これをニッポンチャンピオンに変えないといけないね。そういう意味では新たな目標というか、課題として受け止めてね」

昨オフから耳が痛いほど言われ続けた。4年ぶりリーグ制覇も日本シリーズでDeNAに惜敗。優勝の喜びよりもむしろ、最後の最後で頂点を逃したチームへの落胆の声がずっと胸に突き刺さった。誰よりも悔しさを抱いてきたのは王会長だっただろう。雪辱に向けた2025年シーズンがいよいよ開幕する。王会長の言葉にも力がこもった。

チーム練習を一塁側ベンチに座って見守った。外野席にポンポンと打球を放り込むリチャードの打撃に熱視線。栗原の故障もあって開幕スタメンをつかんだロマン砲の開花に寄せる期待も大きい。「いやあ、今日のリチャードはよかったよ。芯で捉えさえすれば、軽くスタンドに行くんだから。打ってほしいよね」。王会長は右人さし指と親指でOKマークを作って何度もうなずいた。チームの勝敗もさることながら、大砲候補の覚醒が何より待ち遠しい。

通算868本塁打を放った世界のホームラン王。現役時代はゲンを担ぐことはしなかった。開幕だからといって、バットを自宅に持ち帰ったりしなかったという。「バットはいつも(本拠地の)後楽園球場に置いていたよ。そういうのはしなかったねえ。そういう人もいるだろうけどね。僕の場合はホームランを打ちたいという気持ちじゃなくて、ホームラン王を取る、という気持ちでやっていたから。それだけのモノをやって(開幕に)臨むわけだからね」。にこやかに話してくれたが、何とも覚悟のレベルが違う。

日本一奪回もさることながら、リチャードら若鷹の飛躍も楽しみなシーズンがいよいよ幕を開ける。【佐竹英治】