17日のドラフト会議に向け、指名候補を一気に紹介する。第4回は「四天王」に負けない本格派の高校生投手。

ドラフトファイル:井上広輝
ドラフトファイル:井上広輝

日大三・井上広輝投手(3年)は9月20日にプロ志望届を提出した。2カ月前の7月24日、プロへの決意を固めた。

西東京大会の準々決勝・桜美林戦で3番手で登板し負けた。その夜のうちに小倉全由監督(62)と進路を話し合った。指名順位は関係なく12球団どこでも飛び込む。ただ、育成枠ならば今秋のプロ入りはしない。

雪辱に燃える井上はドラフトの日を心待ちにする。その日を境に、18歳の原石たちへの評価は横一線に戻る。指名順位という結果は、プロの競争原理の中では、はい上がろうとする強さの原動力になる。

高3夏に完全燃焼できなかった屈辱が、井上の推進力だ。「高校野球では悔しい思いをしました。プロではいい思いをしたいです」。高2で夏の甲子園を経験しているからこそ、最後の夏の悔しさが鮮明になる。

秋に取り組むのは変化球。「ストレートと同じ軌道で打者の手元で変化すれば、芯を少しでも外すことができる。そんな軌道の変化球を、どんな場面でも投げられるようにやっています」。すらすらとは話さないが、多少のぎこちなさに、愚直さをにじませる。

高2夏の甲子園で150キロを投げた。ソフトボールで鍛えた手首のスナップが特徴。リリース時、ボールに強さを加える。井上が登板する練習試合には必ず複数球団のスカウトが視察に訪れた。181センチ、83キロ。最速は152キロ。カーブ、チェンジアップ、スライダー、スプリット。フィールディングもレベルが高く、U18W杯の高校日本代表では、永田監督が最終選考ギリギリまで悩んだ。

夏から秋にかけ、たっぷりと走り、投げてきた。「投げ込みを意識する時は100球以上投げます。今日は数は少なくして全力で投げようと決めた日は、球数を制限します」。頭の中にはローテーション投手での2ケタ勝利を描いている。

最速の更新よりも、試合での球速アベレージに重点を置く。「アベレージが1キロでも遅くなると、プロの世界では厳しくなると知りました。だから、上積みしていけるように心掛けています」。目標は、アベレージで140キロ台後半。そのための投げ込みであり、ストレートを生かすための、変化球のレベルアップになる。

「プロでやってやるんだという気持ちです」。視線を合わせていると吸い込まれそうで怖くなるような目だ。その瞳の奥でメラメラと闘志が燃えている。【井上真】(つづく)