高原のねごと

日本背負う「投の藤浪、打の鈴木」思い交錯の2打席

この春季キャンプ中、「ええもんを見たな~」と思わせる光景は2月23日、沖縄市のコザしんきんスタジアムで行われた広島-阪神のオープン戦でした。

広島対阪神 4回裏広島1死三塁、鈴木誠に中犠飛を浴びる藤浪(2020年2月23日)
広島対阪神 4回裏広島1死三塁、鈴木誠に中犠飛を浴びる藤浪(2020年2月23日)

阪神が1点リードの4回裏、藤浪が2番手で登板。そのときに起こった三塁側を始めとする球場から起こった歓声の大きさといったら。いかにこの投手が虎党だけでなく野球ファンから注目されているかを感じさせる場面でした。

しかし結果は簡単に出ない。野間にいきなり二塁打を浴びた後、1死三塁になって主砲の鈴木誠也を打席に迎えました。ここで鈴木はバットの芯でとらえた当たりの中飛。野間は楽々と同点のホームを踏みました。

さらに5回です。藤浪は連打を浴びた後、押し出しの四球、死球を出してしまい、2失点。その後の2死満塁で再び鈴木との対戦になりました。

ここで鈴木は「カーン!」という快音を残す打球を放ちました。結果は左翼へのライナー。これで藤浪はなんとか2イニングを終了し、マウンドを降りたのです。

復活が期待される藤浪ですが課題の制球難はこの試合でも顔をのぞかせました。試合後は「反省しなければ」と話していました。

そんな試合で「ええもんを見た」と思ったのは鈴木の態度でした。制球難に悩まされる藤浪は、特に右打者の上半身方向にすっぽ抜けることが多いとあって、オープン戦で藤浪が投げるときは右の主力打者は対戦を避けるのが普通になっていました。

しかし主力も主力、日本代表の主砲でもある鈴木は、敢然と、と言うのも妙ですが2打席に立ち、いずれも見事な当たりを放ったのです。試合後、その当たりを鈴木に聞いてみました。

鈴木 そうですね。あいつもだいぶ気を使って投げていたみたいで(外角に)引っ掛ける球が多かったですね。まあ速い球を見たかったので、それはよかったです。シーズンでまた対戦するのが楽しみですよ。

鈴木と藤浪は高卒8年目の同学年です。親交もあり、「あいつ」と言うのも分かる間柄です。甲子園のスターだった藤浪に対し、あこがれとライバル心を持って広島で奮起してきた鈴木ですが、いまは立場が逆転している様子です。しかしその潜在能力を知るだけに、やはり、意識しているのでしょう。

そんな鈴木との会話を藤浪にも少しだけ聞いてみました。宜野座キャンプ打ち上げだった26日のことです。

藤浪 そうですね。でもあれはフツーに引っ掛かっただけなんですけどね。まあ、完璧にとらえられました。右が久しぶりって、そうですね…。イヤがらせで立ってきたな、と思いました(笑い)。

もちろん藤浪からしても鈴木は、今や、まぶしい同学年でしょう。プライベートでの親交があるので、関西人らしく、あえて「イヤがらせ」などという皮肉っぽい言い方をしましたが、対戦できたことを喜んでいる様子でした。

虎党、広島ファンだけでなく日本の野球を背負ってたつ存在が「投の藤浪、打の鈴木」と今でも思っています。藤浪が復活し、阪神、広島が優勝を争う場面で火花が散る2人の真剣勝負を見たい。そんな思いでシーズン開幕を待っています。

取材生活30年を超える古だぬき記者。吉本興業から宝塚歌劇団、あるいはヤバい人たちの取材から始まり、プロ野球ではイチロー日本一(96年)星野阪神V(03年)緒方広島連覇(17年)などの瞬間に立ち会った。日刊スポーツ大阪本社編集委員。

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