「8月のサイレン」は今年、聞けないのか、という思いがしている。まだ5月だが第102回全国高校野球選手権大会(8月10日開幕、甲子園)は中止が決まり、20日にも正式に発表される方向だという。

毎年、大会中の8月15日、正午になると試合中でも一時、中断して球場全体に響き渡るサイレンを鳴らす。それを聞いて誰もが一瞬、思いを巡らす。

同日は終戦記念日だ。サイレンとともに戦没者を追悼する黙とうが行われる。63年の第45回大会から続いているという。

親子連れで観戦に来ている子どもは「あれは何?」と聞くだろう。テレビの前でも同じである。先の大戦を知らない子どもにすれば、なぜ楽しく野球を見ているときに、そんな要素が飛び込んでくるのか。不思議に思うかもしれない。

1963年(昭38)生まれのこちらも同じだった。そんな子どもたちに親や周囲の人がその理由を教える。その行為が重要だ。

国民全員が高校野球に注目するはずはない。それでも夏のお祭り的行事の最中でのサイレン、そして黙とう。日本人ならその意味を知るべきだし、続けてほしいと思うことの1つだ。

昨年、サイレンは鳴らなかった。雨で試合が順延されたからだ。残念だったが今年は想定外、まさかの事態である。

それにしても8月の甲子園球場だ。スケジュールは空白になってしまうのだろうか。プロ野球が開幕できたとして当初の日程で行うのなら当然、阪神の主催試合は予定されていない。

その日程でいけば、8月15日は京セラドーム大阪での広島3連戦のただ中だ。そんなことが可能ならという前提がつくのだが、これを甲子園開催にすればその日に甲子園で「夏のサイレン」を鳴らすことはできるかもしれない。ナイトゲームになるので時間は変わるにしても。

サイレンに関係ないが12球団すべてがホーム、ビジターを問わずに8月に甲子園で試合するというウルトラCプランはどうだろうか。

プロでバリバリ活躍する選手は全員が元高校球児である。今年は甲子園への恩返しの意味も込めて…。

「高校野球がやれないのにプロはできるのか」などという意見はあるだろうし、もっと多くの障壁があるのも当たり前だ。

それでも巻き起こったコロナ禍と、それと戦った国民連帯の記憶を将来に残す一環として普段のシーズンとは違うことを行えれば。そんなことを夢想している。