18年ぶり4度目の出場となった益田東(島根)が7日、夏の高校野球1回戦で常葉大菊川(静岡)に7-8の1点差で惜しくも敗れ、春夏通じて甲子園初勝利はお預けとなった。

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 小さな球児が甲子園で大きく羽ばたいた。18年ぶり4回目の出場を果たした益田東の「2番遊撃」を任された首藤舜己(しゅどう・みつき)内野手(3年)は今大会の全校登録選手の中で、身長は最小タイの158センチ(他に3人)。惜敗したものの、小柄ながら攻守にわたって躍動。常葉大菊川(静岡)との対戦で、両校でただ1人の3安打をマークした。

 実家は甲子園から歩いて10分ほど。幼い頃から阪神ファンで、憧れの選手は鳥谷だ。小学6年から中学3年までは兵庫・西宮市の運動会が甲子園球場で開催されていた。「(当時は)他の人よりは地面の感覚を確かめたりしていました」。高校3年最後の夏で“凱旋(がいせん)”を果たした。

 小さいことをポジティブに考える。大庭敏文監督(37)からも教えられた。「小さいんだから努力と工夫をしっかり積み重ねなさいと監督から言われていたので…」。首藤は小柄な体形を生かし、ストライクゾーンが狭まることを有利ととらえる。「小さいから周りと比べて遠くに飛ばすことはできないけれど、小さい分投手も投げづらいと思う。ネガティブに考えることはなかった」と話した。

 小技も光った。7回の無死一塁の場面では、バントの構えを見て前進してきた三塁手の動きを見てプッシュバントで三遊間へ。内野安打としてチャンスを広げた。練習後の自主トレでバント練習を1時間、毎日継続して行った成果だ。「練習試合でもやっていたので、自信を持ってやりました」と胸を張った。守備については「1歩目のスタートを気をつけています。監督から言われている優先事項として『正確に、強く、速く』を心がけてやっていました」。さまざまな細かい工夫が、自らの活躍の場を広げた。

 試合当日の7日は自身の18歳の誕生日。「たくさんの人に祝ってもらえてうれしかった」。勝利の校歌は歌えなかったが、誕生日を聖地で迎えることができた。「甲子園でできたことは幸せでした」としみじみと言った。

 「小さくてもできることはある」。大舞台で個性を存分に発揮した首藤の背中が大きくみえた。【古財稜明】