多くの虎党同様、2回、村上頌樹のスクイズ失敗には考えさせられた。一応、説明すれば、敵失で1点を先制し、なお1死二、三塁の場面。ここで打席は9番・村上にまわった。カウント2-2となったところで阪神ベンチの策はスリーバント・スクイズ。しかし村上はこれを空振り。三走・木浪聖也も刺され、痛い併殺となったのだ。

頭に浮かんだのは前監督・岡田彰布(オーナー付顧問)がよく言っていた言葉である。「勝負にあわよくば…はないんよ」-。そう言った岡田は意外にも思えるがスクイズはほとんどやらなかった。特に投手にはサインが出なかったと記憶する。「そんなん、大事なとこで、スクイズて、そんな決まらんよ」と、あの口調で言ったものだ。

皮肉というか、なんと言うか1番に入っていた高寺望夢はこの日、好調だった。1回に床田寛樹から右前打を放っている。終わってみれば今季2度目の猛打賞。4回の野選についても安打でもおかしくなかったように思うので大当たりだった。そう思えば、2回のあの場面、村上は三振し、2死二、三塁で高寺以下の上位打線にまわしてもよかった気はする。

そうは言っても。もし、あの場面でスクイズが決まり、追加点をあげた上で高寺にまわせていれば奇襲成功で一気に床田をKOしていた可能性もある。「あと1本出れば」という場面は他にもあったし、2回だけが重要と言えるかどうか。「あそこでのスクイズはないで」と決めつければ、それは「たられば」なのかもしれない。

いずれにせよ勝負の世界は結果がすべてだ。どんな作戦をとっても勝てばいいのだし、負ければいろいろな見方が出てくる。だからこそ「あわよくばはないよ」という言葉に意味があるのかもしれないが。

雨にたたられた影響で、阪神はこの敗戦で6月、月間負け越しが決まった。内容も拙攻の末、逆転の1点差負けといいところがない試合か。剛腕・高橋遥人が投げる28日に負けるようなことがあれば、今週は勝ちなしで終わる。

「勝負ですからね。こちらにいい展開に向けたいし、みんなが展開を向けたいと思って打席に入っていましたから。また明日切り替えてやっていきたい」。采配で動かした部分…という質問に指揮官・藤川球児はそう答えた。勝負はまだまだ続くのである。(敬称略)

広島対阪神 8回裏の守備を終え、ベンチで考え込む阪神藤川球児監督(撮影・上山淳一)
広島対阪神 8回裏の守備を終え、ベンチで考え込む阪神藤川球児監督(撮影・上山淳一)