「もう、これしかない」という結末か。延長10回、森下翔太が放ったこの日、2本目の本塁打、19号ソロは試合を決めるサヨナラ弾だ。沸きに沸く甲子園。4万2571人、その9割以上を占める虎党は歓喜に酔いしれたのである。

大合唱の「六甲おろし」を聞きながら思い出したのは闘将・星野仙一が言っていたことだ。中日監督時代、闘将は勝ったときだけ合唱する「六甲おろし」の仕組みを知らなかった。行きつけの喫茶店で居合わせた女性に教えられ「それなら思い切り歌わせたろうやないか!」。そう誓い、優勝の03年、本拠での戦いに燃えたのである。

そんなことを書くのは今季、甲子園で苦労するチームの姿を見るからだ。今季、阪神は試合前までホームゲームで17勝16敗1分け、貯金「1」だった。ビジターでは20勝15敗と5つ貯金をつくっているのに比べ、苦労している印象だ。

しかも、この数字には京セラドーム大阪、倉敷マスカットの主催試合を含む。その2球場での戦績は3勝1敗。つまり甲子園に限れば14勝15敗と借金を背負っていた。この日をなんとかモノにし、それを15勝15敗と5割に戻したのである。

「甲子園の野球をしなければ-」。以前に指揮官・藤川球児はそんな話をしていた。いろいろな見方はあるだろうが、やはり長打の出にくい広い球場での戦いは「投手を中心とした守り」というスタイルになるはず。球児も、そのことは当然分かっており、自戒を込めてそう言ったのだ。

派手な決着だったこの日も内容をみれば、正直、そういう雰囲気ではなかった気もする。先発・才木浩人からブルペン陣が踏ん張っている間に本塁打キングが2発という結果は評価できるものだ。それでも下位打線から安打でつなげていった中日打線の戦い方が、理想にはより近い気もする。

もちろん常に同じような試合ができるはずはない。勝てばそれでいい部分はある。それでも今後を見据え、しっかりしたゲーム運びを期待したいし、今のチームはそれができると思うのだ。

「ビジターで長打が出やすい球場の後に(甲子園で)違う野球に変えなければいけない。難しいのはありますけど、1つずつ選手たちのバリエーションを含め、修行でしょうね」。指揮官も「修行」という言葉を使い、そう話した。連覇への道は、これからだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 10回裏阪神1死、サヨナラ本塁打を放った森下翔太(右から3人目)はナインの祝福を受けながら生還する(撮影・上田博志)
阪神対中日 10回裏阪神1死、サヨナラ本塁打を放った森下翔太(右から3人目)はナインの祝福を受けながら生還する(撮影・上田博志)
阪神対中日 お立ち台でガッツポーズする阪神森下翔太(右)と浜田太貴(撮影・前田充)
阪神対中日 お立ち台でガッツポーズする阪神森下翔太(右)と浜田太貴(撮影・前田充)