北神奈川地区で「県立から甲子園へ」を目標に掲げる2チームがいる。昨夏16強に進出した大師と今春16強に進出した白山だ。

 就任6年目の大師・野原慎太郎監督(35)は東海大相模出身。一方就任5年目の白山・村田浩明監督(31)は横浜出身だ。ともに現役時代に甲子園を経験し、お互いを尊敬し合う間柄。優勝するために何が必要かは熟知している2人だが、県立高校を甲子園に導くためにはどうすればいいか…。よく合同練習を行うという両チームを取材した。

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 大師は昨年、3回戦で桐蔭学園を破るなど快進撃で16強に進出。接戦をものにしてきた印象だが、野原監督は「投手の武器がない。打線も140キロを打ち崩せる力がなかった」とバッサリ。冬場は投手陣は走り込み、野手陣はバットを振り込んだ。東海大相模のような相手では1つの怠慢なプレーが命取りになる。たとえうまく抑えても「今のは相模だと打たれるぞ」と選手たちに意識させてきた。「相模基準」はチームのテーマになっている。

 選手を引っ張る鷲尾海耀主将(3年)も「全員が基準に達するようにスキのない野球を目指す」と語る。1年からレギュラーである経験を生かし、チームの要として背中で引っ張る。

 遠方から通学する選手が多く、父母会も全力で後押しする。「強化期間」である現在は選手の親たちが交代で集まり、全員の食事を作ってサポート。野原監督も「毎日一生懸命作っていただいてます」と感謝する。全国制覇という高い目標を掲げる大師は間もなく「相模基準」に到達し、開幕日(8日、横浜スタジアム)に日大高と対戦する。

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 一方で白山の村田監督は春16強について「なっただけで特に何もなかった。もちろん甲子園が目標ですが、3年間やってきたことを出すだけです」と控えめ。ボール回し、ノック、ティー打撃。やることは常に基本練習のみ。「高い技術を練習しても基礎ができていないと勝てない」。特別に強化したものもない。ただ指導法はここ数年で変化した。今までは全員に同じことをさせた「もち型」だったが、1つ1つの米粒(選手)を見てそれぞれに合った指導をする「おにぎり型」に変え、まとまりができてきた。

 村田監督の考えを選手も支持する。ノックの時には全選手が大きな声を出して盛り立てる。山村晧遥主将(3年)は「パワーをマウンドに集めて大きなおにぎりにする。監督から教わったことを発揮して甲子園に行きたい」と力強く語った。白山は16日の2回戦(サーティーフォー相模原)で厚木西と伊勢原の勝者と対戦する。

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 対称的な練習法で頂点を目指す両監督だが、共通しているのは「すべては3年の夏への根拠づくり」だということ。最後の夏になる3年生のために自らも選手と一緒に戦う。両校が対戦するなら、29日の決勝戦になる。県立では51年希望ケ丘以来の夏の甲子園を目指し、両校の戦いがいよいよ始まる。【松熊洋介】