鶴岡東(山形)が6-7のサヨナラ負けで涙をのんだ。関東第一(東東京)に延長11回裏2死一、三塁、右前に痛恨の一打を運ばれ、同校初のベスト8を逃した。

2回表に山路将太郎内野手(2年)の適時二塁打で先制も、その裏に4失点。だが3回に竹花裕人外野手(3年)の今大会2本目の本塁打で反撃し、6回に山路の2本目の適時二塁打で追い付き、さらに暴投(記録は振り逃げ)と機動力も絡め再び勝ち越した。7回以降は打線が1安打に抑えられ、史上初の東北勢3校8強進出を逃したが、強豪と最後まで互角に渡り合った。

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鶴岡東ナインは最後の最後まで勝利を追い求めた。11回裏2死一、三塁、2番手の池田康平投手(3年)は大井光来捕手(3年)が構えたど真ん中に渾身(こんしん)の1球を投げ込んだ。「とにかくコースとかじゃない。思い切り腕を振ってこいと」(大井)。138キロの直球は、関東第一の3番平川嶺外野手(3年)に右前にはじき返された。サヨナラという残酷な幕切れにも、「打たれたけど、今日のどの球より池田の気持ちが入っていた。間違いなくベストボールだった」と大井は満足感でいっぱいだった。池田も「甲子園で今まで対戦したことがないレベルの高い相手と戦えることができた。野球をもっと好きにさせてくれた」と聖地に感謝した。

昨夏は山形大会決勝で羽黒に延長11回サヨナラ本塁打を許し甲子園を逃した。7人の経験者が新チームに残った秋は県大会で酒田南に敗れセンバツ出場の可能性が消えた。「謙虚さを失い、やることをやらないでバラバラの状態だった」(大井)。36人の3年生だけ、10月から1カ月半、ボールも触らせてもらえず、ひたすら走り込みの練習を課された。「お前ら、やれるもんならやってみろ」。佐藤俊監督(48)からかけられた言葉で火が付いた。極寒の朝4時から素振りを行ったり、深夜まで自主練習をしたこともあった。心を入れ替えつかんだ甲子園で、成長した姿を見せた。

春夏通じて甲子園で初の2勝。13年日大山形の4強にこそ及ばなかったが、歴史をつくった。スタメンただ1人の2年生山路は、先制打を含む3安打と躍動した。「3年生には厳しく指導してもらって迷惑をかけたが、それでも支えてくれた。感謝しかないです」。そして甲子園への思いも新たにした。「すごく、絶対もう1回来たいと思った場所だった。夏にまた戻ってきたいけど、その前に秋が勝負だと思う」と早くも前を向いた。佐藤監督は「よくやったと思います。簡単には負けなかったですよね。あと1つ、勝てそうで勝てなかった先輩たちの姿を見て、下級生たちにはまた新しい歴史をつくってほしい」と期待を寄せた。【野上伸悟】