桐蔭学園が2試合連続コールド勝ちでベスト32に歩を進めた。昨年10月に就任した小倉丞太郎監督(49)は「今日はいい1本が多く出てくれたので、少し展開は楽になりました。今後はチャンスが少なくなってくる。なんとか1点をもぎ取り、しぶとく勝ち上がっていきたい」と、早くも次戦以降の厳しい戦いを見据えた。
初回こそ硬さがあったが、2回以降は相手ミスにも乗じて13安打12得点と圧倒した。
自身は桐蔭学園高のエースとして94年センバツに出場している。一般受験で東京学芸大に進学。社会人野球の朝日生命、日立製作所でプレーし、現役引退後の05年に母校に戻り、コーチ、部長を歴任してきた。
指導ボリシーは「本番で持てる力を発揮させること」。選手たちが大舞台でも緊張に飲まれず、平常心でプレーできるメンタルの強さを重要視している。「よく選手たちに言うのは、『うまくいった時をちゃんと反省しなさい』ということ。失敗した時はどうしても気持ちが萎縮しがちですが、うまくいったプレーの中にこそ、次の目標や再現性のヒントが隠されている」と話す。練習中も時にはプレーを止め、「今、どういう意図で動いたの? 」を本人に確認し、その視点をチーム全員で共有するようにしている。
指導者として一方的に答えを与えるのではなく、選手と同じ目線に立ち、共に試行錯誤を繰り返す。「できない気持ちに寄り添って話をしたい。完璧を求めすぎず、7割できれば十分」と、選手への深い理解と信頼を口にした。監督の情熱は、グラウンド外での生活にも及んでいる。週に4日は寮に寝泊まりし、選手たちと積極的にコミュニケーションを図る日々を送る。選手を下の名前で呼ぶなど、かつての上下関係にとらわれない新しい信頼関係を築き上げている。
選手たちが掲げる目標は99年以来27年ぶり夏の甲子園出場だ。だが、小倉監督は「ここ最近は横浜スタジアム(準々決勝以降の舞台)で試合ができていない。まずあそこで野球をやらせてあげること。神奈川の高校野球の醍醐味を肌で感じ、そこで楽しい、嬉しい、あるいは悔しいといった感情を全力で味わってほしい」と熱っぽく語った。
チームスローガンは就任後に「鳳凰来儀(ほうおうらいぎ)」とした。「桐蔭」という名の由来である「鳳凰が住む、霧に包まれた隠れ里」から着想を得て、「これから鳳凰が羽ばたこうとしている、良い予兆という意味」と説明した。小倉監督の丁寧なタクトで、さらなる高みへと突き進む。

