マリナーズ元CEOのケビン・マザー氏が不適切発言で辞任した騒動をきっかけに、MLBで「サービスタイム操作」の問題が大きな議論を呼んでいる。

サービスタイムとは、選手がメジャーに昇格してから費やす日数のこと。通常のレギュラーシーズンは187日間で162試合が行われるが、選手がシーズン中172日以上メジャーに滞在すれば1年と計算され、6年でFA権を取得する。もし1年目が171日で終わると、その1年目は1年とは計算されず、FAになるまで実質的に7年かかる。球団は有望株選手の保有権を1年でも長くキープしようと、意図的に1年目を171日以下に抑えるのが「サービスタイム操作」だ。

これは今に始まったことではないのだが、球団側が操作していると認めることは決してなく「育成プランのため」などと主張するのが常だった。例えばカブスのクリス・ブライアント内野手(29)は、1年目の2015年開幕時に初昇格が見送られ、2週間後に昇格となったことでFA時期が1年遅れた。これを不服として異議申し立てまで行い、昨年1月まで球団と係争を続けた。最終的に申し立ては退けられ、球団側が勝利。この時の球団の主張は「ブライアントの今後の野球人生を考え、開幕から過度なプレッシャーを与えることは育成的にも妥当ではない」というものだった。

ところがマザー氏がイベントでのぶっちゃけトークで漏らしたのは「有望株選手を6年でFAにさせたくないので、開幕から昇格させない」という、明らかに意図的なサービスタイムの操作だった。これまでは選手側が不信感を抱いたとしても、球団が認めなければどうにもならない。それが今回のマザー氏の発言によって意図的な操作という真実が白日の下にさらされた格好となり、選手たちが続々と怒りの声を上げている。サービスタイム操作という球団の不誠実は今後、厳しい目を向けられることになりそうだ。

ただしすべての球団が有望株選手に対して操作をしているわけではなく、例えばパドレスは若きスターのフェルナンド・タティス内野手(22)を19年開幕から昇格させた。エンゼルス大谷翔平投手(26)も18年にメジャーデビューをする前、球団はFA時期を遅らせるため開幕から昇格させないかもしれないと予想する米メディアが多かったが、実際は開幕から昇格している。タティスの場合は6年でFAになれる状況だったが、今月22日に14年間の長期契約に合意。こうしてみると、サービスタイム操作をしていない球団と選手の関係は、やはり良好だ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)