いよいよ大リーグ各賞の受賞者発表の季節だ。エンゼルス大谷翔平投手(28)とヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)のMVP争いがシーズン終盤に大きな論争となったが、どのような結果になるのか。米メディアではジャッジ有力との声が圧倒的だが、実績のある元投手からは大谷を推す声が多かった。
なぜ元投手が「大谷MVP」を推すのか。その答えは、レッドソックスなどで通算216勝を挙げ2度の300奪三振を達成したカート・シリング氏(55)の発言から読み解くことができると思う。
同氏はポッドキャストでこう語っていた。「ジャッジは素晴らしいシーズンを送ったが、オオタニほど価値の高い選手はいない。圧倒的だ。15勝、200奪三振をマークして、本塁打を40本近く打っている。エースであり、中軸打者だ。ベーブ・ルースだって同時にここまでのことはできなかった」。さらに「エースで主力打者の彼は他選手の倍の年俸をもらう価値がある。しかも2役をこなしているのに使うロースター枠は1人分だけだ」と指摘していた。
実績ある先発投手だからこそ、常に勝ちを計算される中で結果を出し続ける過酷さを知っているだろうし、それをやり遂げながら打者として主力の働きをするすごさを実感しているのだろう。と同時に、シリング氏はそれが球団にとっていかに価値のあることかに言及している。
エース級投手は、MVPに選ばれることは非常にまれではあるが、球団からは誰よりも高く評価される存在になっている。今季の年俸ランキングを見ても、最高年俸はメッツの先発右腕シャーザーの約4333万ドル(約65億円)、2位がヤンキースの先発右腕コールの3600万ドル(約54億円)だ。ちなみに球団は指標のWARを使って選手を評価しているが、我々が一般的に目にするfWARやrWARではなく、それぞれ球団独自のWARを作り、使用している。球団が評価する視点と、MVPを選出する全米野球記者協会(BBWAA)の投票者の評価する視点が違うのは、そんな点からもうかがえる。
大谷とジャッジのMVP論争で「ジャッジはポストシーズンに進出するチームで勝利に貢献した」という声が多かった。一方の大谷のエンゼルスは勝率5割を切り地区3位だ。そこをMVPの選出の理由付けにしている米記者は多い。しかしシリング氏は「MVP(Most Valuable Player)のvalue(価値)の意味を考えてみて」とも言っていたので、もっと広い意味での球団にとっての選手の価値を指摘していたと思う。
米記者の中でも、たとえばニューヨーク・ポスト紙のジョン・ヘイマン記者はジャッジがMVPと主張する一方で「オオタニは最高年俸の記録を更新するだろう」と書いていた。ヘイマン氏のような米記者にとって、MVPと「最も価値のある選手」は別ものなのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)




