ブルージェイズ山口俊投手(33)が激動のメジャー移籍1年目を振り返る姿は、頼もしく見えた。26日、千葉市内でのチャリティーイベントに参加し、コロナ禍で戦ったシーズンについて改めて語った。

「今後の野球人生で、自分にとってすごくプラスだったのかなと感じてます。無駄な1年じゃなかった」

夢でもあったメジャー挑戦。ようやくたどりついた舞台は、新型コロナウイルスの影響で開幕すら不透明な状況だった。3月下旬に一度日本に帰国し、トレーニングを継続。「開幕するかも分からない、中止になるかもしれない、という中でのメンタルの保ち方は本当に難しかった」と、当時の心境を明かした。

7月下旬の開幕が決まっても、苦難の連続だった。コロナ禍で本拠地トロントでの公式戦は、カナダ政府から許可されなかった。「カナダに入国できなかったり、本拠地がどうなるか、他のチームではあり得ない不測の事態が多かった。(今後は)これ以上のことはないと思う」。米国ニューヨーク州のバファローに拠点が変更され、夫人と2人の子供たちと過ごす予定だったトロントの自宅には一度も帰れなかった。日本に家族を残し、離れ離れのままレギュラーシーズンを戦った。

1年目の成績はリリーフで17試合に登板し、2勝4敗、防御率8・06と結果は出なかった。「明確な目標を見失いかけた」と吐露したが、「こういう不測の事態も起きるんだなという想定の中で今オフ、トレーニングができるようになってきた。その辺はいろいろ勉強になりました」。メジャー30球団、また日本人選手の中で最もコロナ禍の影響を受けた。その中での経験は来季への好材料にもなった。

環境面で厳しい状況に立たされていた中、自身の意向で今夏に千葉市の児童養護施設に約600枚のマスクを配布。「少しでも何かしら力になれれば」と、知人の企業からスポンサーとしてサポートを受けながら、年末に野球少年たちと交流し、チャリティーマッチも実現させた。

ファンの期待を改めて感じ、来季、先発ローテーション入りをかけて勝負の2年目に挑む。「昨年のこの時期よりも状態はすごくいいし、手応えがある」。異例ずくめの1年を経験した山口の言葉には、どこか力があり、今後への自信を感じさせた。【MLB担当=斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)

12月26日、チャリティーイベントに参加したブルージェイズ山口俊
12月26日、チャリティーイベントに参加したブルージェイズ山口俊