MLBの公式戦では、今季から「ピッチクロック」が導入され、現時点では試合時間が約30分短縮されたデータが出ています。テンポのいい試合になるのは、全般的にプラス材料として見られていますが、ビジネス面では別の側面も出始めています。
というのも、試合時間が短縮されることによって、球場内でのビールやアルコール類の消費量が減少し、大幅な売り上げ減につながっています。これまでMLBの各球場では、各球団の自主規制で、アルコール類の販売は「7回終了時」までとなっていました。ところが、「ピッチクロック」の導入に伴い、試合の進行が早まったことで、試合開始から2時間あまりで販売が終了されるケースが大幅に増えてきました。
多数の従業員を抱えている球場の営業関係者にとって、売り上げ減は経営上の死活問題でもあり、まずはビールの醸造地としても知られるミルウォーキーの本拠地アメリカン・ファミリー・フィールドが、あくまでも「試験的」としながらも、1イニング延ばして「8回終了時」までの延長に踏み切りました。その後、アリゾナ、テキサス、ミネソタ、ヒューストン、ボルティモアも追随して、販売延長を決めました。
メジャーの球場に限らず、どんな飲食店にも、時刻によって「ラストコール(オーダー)」はあるはずです。その一方で、今回の「販売延長」に関して、フィリーズのマット・ストラーム投手は、SNS上で反対意見を発信しました。「7回で終了していたのは、ファンの酔いをさまして、安全運転で帰ってもらうためだったはず。ファンやその家族を危険にさらしている」と批判。「球団オーナーは考え直すべき」と、主張しました。
字面だけを見ると、ストラームの意見は正論のようにも聞こえます。ただ、ふと考えると、「?」もよぎります。裏を返せば、7回終了時であれば「酔いをさます」ための許容範囲内で、「8回ではダメ」ということなのでしょうか。
そもそも、飲酒運転が前提にあるということは、いかがなものかと…。
ニューヨークのように、地下鉄など公共交通機関が利用できる球場はともかく、地方都市のほとんどが広大な駐車場を持ち、多くのファンは自家用車で観戦に訪れます。それでも、膨大な量のビールは売れ続けています。
7回か、8回か-。
いずれにしても、ビジネスライクかつ車社会の米国で起こる論議は、日本ではあり得ないような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)




