マリナーズのイチロー外野手(44)が、インディアンス戦に「9番左翼」でスタメン出場し、復帰後初安打を含む4打数2安打と、マルチ安打をマークした。メジャー通算3082本となり、歴代21位に浮上した。守備でも本塁打性の打球をスーパーキャッチ。攻守に光るプレーを披露し、地元ファンから大声援を浴びた。

 地元シアトルのファンだけでなく、だれよりもイチロー自身が待ち焦がれた1本だった。3回裏の第1打席。二遊間へゴロを転がすと、一瞬で加速した。キャンプ中に訴えたふくらはぎ痛の影響を感じさせない走りで、一塁を駆け抜けた。イチローならではの二塁内野安打は、移籍後初安打というだけでなく、2018年初安打としての感慨も含んでいた。

 「もちろん、それは僕にとって重い1本です。この1本があるかどうか、ずっと分からないまま、この冬を過ごしてきたので、重い1本になりましたね」

 契約交渉が進まなかった昨オフ。その間の心境を、移籍会見で「泰然」と表現した一方で、「この1本があるかどうか」は定まっていなかった。それだけに、この1本を総立ちでたたえる地元ファンの歓声が、いつになく、心に染みた。

 「やっぱり、ここで野球ができるのは、本当に気持ちいいです。なんか野球している感じがね」

 バットだけでなく、守備でも喝采を浴びた。3回表、イ軍ラミレスの本塁打性の打球を、左翼フェンス際でジャンプしてスーパーキャッチ。「レフトで経験がないので、そこの難しさは少しありました。ただ、捕りますけど」と笑う一方で、実戦勘を取り戻す貴重な機会としても捉えていた。

 「言うほど難しいプレーじゃないです、そんなに。でも、この早い段階であの打球を打ってくれるのは助かりました。守備の機会も印象があるんです」

 第3打席には、左腕ミラーから左前打を放ち、マルチ安打をマーク。メジャー通算3082安打となり、歴代21位に浮上した。

 「そういうこと、今の僕にはどうでもいいことなんで。毎日、こうやってセーフコ(フィールド)に来て、プレーできる、そのことがうれしくて、そんなことどうでもいいです」

 シアトルの地で、毎日、グラウンドに立つ喜び-。今のイチローほど、楽しそうにプレーしている選手は、ほかに見当たらない。【四竈衛】