広島田中広輔内野手(25)が21日、今季1号を放った。6回に1点を返し、なおも2死二塁。巨人の先発杉内の見逃せばボールとなる直球を上からたたいた悪球打ちで、前橋の夜空にアーチを描いた。3回に失点につながる失策をしたが、名誉挽回の1号弾。復調の田中が、停滞する広島打線の中でひときわ輝いている。
見逃せばボールだった。しかし、体が反応した。田中が上からたたいた白球は前橋の夜空に舞い上がり、右翼席へ。開幕19試合目で飛び出した今季1号は、不振を極めた開幕直後ならなかった反応だった。
開幕戦は8番だった。「状態が良くない。8番からはい上がってもらいたい」という緒方監督からのメッセージでもあった。オープン戦期間中は大不振。開幕しても初安打までに13打席を要した。開幕10試合目まで打率は2割にも満たなかった。「結果を求めていたというよりも、自分の感覚が悪いので振れていない」。打撃が小さくなっていた理由を明かす。左腰がしっかり回るように、バットのヘッドを背中にまで回してグリップがベルトにつく形で腰を回転させ、ヘッドに球を当てるティー打撃を続けた。開幕前に「宇宙です」と、独特な言い回しで深刻さを吐露していた。
試行錯誤しながら、田中ははい上がった。この日の2安打で打率を2割9分7厘まで上げ、3割目前。18日の中日戦では、5番を任された。打率と10打点は、ともにチームトップ。さらに得点圏打率はリーグトップの数字だ。
完全復調にも、試合後の表情は厳しい。打撃の話を自らさえぎり「今日、僕は盗塁(でのミス)です」とざんげした。3回だ。1死一、三塁で4番坂本の3球目に一塁走者が盗塁。一塁側にそれた会沢からの送球を弾いた。一塁走者との間に三塁走者が生還。手痛い失点となった。一塁走者とぶつかりそうだったこともあるが「中途半端になってしまった」と自分を責めた。守備を重視する男は、今季1号の喜びよりも、失点につながる失策を悔やんだ。
それでも、劣勢の中で反発心を示した。この夜の失策、そして敗戦から再び這い上がればいい。それこそ、今の広島に求められるものだ。【前原淳】



