実力者の本領発揮だ。日本ハム近藤健介捕手(25)が、芸術的な一振りで西武菊池雄星投手(27)とのハイレベルな攻防を制した。1点を追う7回2死三塁、フルカウントから最大球速差30キロのカーブに反応。同点の中前適時打とした。マウンド上の菊池は珍しく落胆。チームは試合をひっくり返した。首位とは4・5差。まだまだ食らいつく。

 日本ハム近藤が、神懸かり的な“反応”で西武のエース菊池を打ち砕いた。2-3の7回2死三塁、156キロの剛速球をファウルにしてフルカウントとし、続く6球目だった。「何も考えていませんでした。基本、タイミングは真っすぐに合わせていましたし。体が反応して、止まりました。意識はしていません」。無の境地で直球を打ちにいきながら、実に球速差30キロの126キロのカーブに、下半身がピタリと止まった。

 中前へはじき返した打球は、起死回生の同点適時打に。マウンドで両膝に手をつき、うなだれる菊池の姿を、しっかりと見届けた。驚異の一打で相手エースの心を折った25歳は「ぶっさいくな打ち方でしたけどね」と、屈託なく笑った。

 兄貴分で4番を打つ中田が、こんなことを話したことがある。「コンちゃん(近藤)は、追い込まれるのが嫌じゃないんだって。追い込まれても、打てる自信があるんだよ。すごいな~って思う」と、4歳下の後輩に感心していた。近藤本人は「追い込まれると何も考えなくていいから、逆にリラックスできるんですよね」。平然と、いとも簡単に言ってのけるのだ。

 日本ハムが誇る球界最高峰の技術。「打席ではフルカウントにすることを、常に心がけています」。自信のある勝負カウントに持ち込み「後ろには中田さんがいて、走者をためて1発打たれるより、僕と勝負してくると思いました」と相手投手の心理を読んだ。「こっちは、あたって砕けろ。どんどん攻めていけたら」。逆転Vは諦めない。【中島宙恵】