「漢」と書いて「おとこ」と読む-。白鴎大・大下誠一郎外野手(4年=白鴎大足利)は、そんな言葉を体現する人柄でチームを引っ張っている。

今は主将ではない。去年まで2年間、主将だった。大学2年生になる直前、黒宮寿幸監督(48)から呼ばれ、託された。「上級生たちと比較しても、大下の統率力は群を抜いていたので」。異例の人事だったが、大下は迷わず受諾した。「やってやろう、と。断る理由はなかったです」。やがてチームも成熟。ラミレスに主将を譲り、自身は選手会長に就任した。

阪神の若き主砲・大山が巣立った白鴎大。黒宮監督は「大下の勝負強さは、当時の大山の10倍くらい」と真顔で評する。大下も「勝負強さだけは自信あります。勝負が大好きなんで」。そう多くない口数が、勝負が話題になると増える。「ランナーがおる時はめっちゃ楽しい。ワクワクする。打てんとめっちゃ悔しい」。強打者だから敬遠されることもある。「それは相手の作戦ですから。でも内心は『勝負しろよ』です」。

ドラフト候補になった。周囲の候補の動向も気になるだろうと思ったら、違った。「同じ学年のやつらと競っていてもダメなんで。常に上を見ていかんと。早くプロに行きたい。すごいピッチャーたちと勝負したい」。日本ハム中田、西武山川、楽天浅村…あこがれの強打者たちの動画を、毎日のように見ている。

4番レフトで臨む最終学年。チームメート3人もドラフト候補ゆえ、必然的にスカウト視察も多い。プロ入りのために「結果」が必要なことは理解している。「とにかく常に上を見て。絶対にプロ野球に行きたいんです」。漢の本能が、しびれるような勝負を欲している。【金子真仁】