最後までエンターテイナーだった。今季限りで現役を引退する日本ハム田中賢介内野手(38)が、故郷福岡でのラストゲームでダメ押し点を演出した。8回1死一、二塁。「代打、田中賢介」のアナウンスに、球場全体がどっと沸いた。

田中賢 びっくりしたね。九州の人の温かさを感じました。生まれ育ったところで、敵味方関係なく応援していただいて、感謝しています。福岡に生まれて良かったなと思いました。

フォークボールを引っかけたが全力疾走で一塁はセーフ。内野安打…と思われたが「映像を見たら、あれはアウトです」。リプレー検証の結果は、アウト。期待した客席のため息とは裏腹に本人は苦笑いだ。それでも“幻の内野安打”で2死二、三塁と好機が広がり、その後の平沼の走者一掃適時三塁打につながった。

両親や高校時代のチームメートが応援に駆けつけた。試合後には、日本ハムの元同僚・ソフトバンク川島から花束を渡され、がっちりと抱き合った。高谷からは、9回の空振り三振の“最後のボール”まで手渡され「実家に置いて飾っておきます」。CS圏3位楽天とは4ゲーム差。「CSへ行ける、行けないは別にして、自分たちの野球を最後までやることが大事」。奇跡への近道を、ベテランは誰よりも知っている。【中島宙恵】