主砲の意地が、クライマックスシリーズ(CS)をさらにたぐり寄せた。楽天浅村栄斗内野手(28)が、古巣西武から今季9本目となる31号2ランを含む2安打3打点をマーク。

17年の球団記録を更新するチーム今季136本目のアーチで、昨季6勝19敗と大きく負け越した西武戦の勝ち越しを決めた。ロッテも勝ったため、4位との1・5ゲーム差は変わらず。総力戦で残り3試合を駆け抜ける。

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浅村は名誉挽回に燃えていた。2回に併殺を狙った一塁送球が高く浮き、一時同点に追いつかれるタイムリーエラー。「(先発の)バシ(石橋)に申し訳ない。何とかバットで返したかった」。仲間のため、西武榎田の内角スライダーを反応で左中間スタンドまでたたき込んだ。続く7回の打席でも匠(たくみ)の技で右翼線へ運び、貴重な追加点を挙げた。

先輩のげきにハッとなった。前日の試合前、右足首を手術してリハビリ中の渡辺直が選手会長の岡島とともに野手ミーティングに登場し、チームを鼓舞してくれた。「状態が悪くても、負けていても、ずっと同じ姿勢。直人さんはマネできない存在」。1軍でともに戦っていた時、その背中に勇気づけられた。ケガをして試合に出られない状態でも、こうしてチームのために行動を起こしている。「前半は首位を走って、自分の状態が悪くなったと同時に(チームも)負けが込んで、今がある。悔しかったし、何とかしたいと思ってずっとやってきたけど、直人さんの声かけで、もう1度思い出させてもらった」。2回の手痛いミスにも、決して下を向かなかった。

島内が3安打3得点とリードオフマンの役割を全う。苦しんでいた茂木が初回の同点打を含む9月初のマルチ安打を決め、銀次も泥くさく3打点を稼いだ。CS争い最終盤というしびれる緊張感の中、腹をくくって試合に臨み、首位西武に今月初の連敗を刻んでみせた。「Aクラスに入ることは、チームが強くなるためのいい経験になる」。常勝チームへの第1歩を浅村がけん引する。【亀山泰宏】