“ノムさん流”奇襲で、勝利をもぎ取った。楽天がプロ野球史上12年ぶりの2者連続スクイズを成功させ、今季最長タイの4連勝を決めた。島内の勝ち越しソロが出た8回無死満塁から、太田光捕手(24)村林一輝内野手(23)がともに初球で成功。石井一久GM兼監督(47)が、恩師の野村監督が敢行した09年楽天以来の作戦でダメ押し、貯金は今季最多の8。硬軟自在のイヌワシ軍団が、首位固めに突っ走る。

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真っ赤なスタンドをざわつかせた。奇襲を成功させた選手たちへ、石井GM兼監督が目を細めて手をたたいた。「シーズン中なので作戦については雄弁に語りたくない」と前置きし「点数はあるだけあった方が、試合の流れは良くなる。みんながうまくバントもコンタクトしてくれて、しっかりやってくれたと思います」。同じ作戦を成功させたのはヤクルト時代の恩師の野村監督以来。野球観の土台となる「ID野球」を元に、最善策をとった。

2人の若武者が、失敗を糧にした。島内のソロで勝ち越した後の8回無死満塁。太田が膝を土で汚しながら、初球を投手前へ転がした。なおも1死二、三塁。村林も初球をプッシュ気味に一塁方面へ転がした。慌てた相手投手の悪送球を誘い、二走も生還させた。

「前回はスクイズを失敗していたので、今回は絶対に成功しようと思っていました」と話す太田は、5月30日DeNA戦でスクイズをファウルにし、決めきれなかった。「昨日失敗したという事実があったので、悔しかった。自分は普通にこなしてナンボだと思う」と話す村林は、前日4日の同戦で送りバントを失敗。わずかなミスが勝敗につながる場面で、与えられた役割をこなし切った。

指揮官も選手を信じ切った。「下手なやつにバント(のサインを)出してるわけじゃない。例えば年間で100回のうち5回失敗するものが2回連続出ちゃっただけ。決められなかったら違うサインになるかもしれないので、一発でやってくれるのは本当に信頼できるものになる」と2選手を高く評価した。チームは今季最長タイの4連勝。前日に「3連勝、3連敗は連勝、連敗に入らない」としていたが「4連勝ぐらいから連勝に入ると思いますけど」と言葉も弾む。信条の“その場しのぎ野球”を体現し、今季2度目のカード3連勝も決める。【桑原幹久】

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