野球、ソフトボールに次ぐ第3のダイヤモンドスポーツが日本に上陸した。その名も「ベースボール5(ファイブ)」。必要な道具はボール1つだけ。バットもグラブもいらない。海外では既に人気を博しており、26年にセネガル・ダカールで開催予定のユース五輪に正式種目として採用された。その実情を探るべく、都内で催されたゲーム型体験会に「潜入」した。【取材・構成=阿部泰斉】
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体験会に先だって行われた記者会見。公認インストラクターを務める、埼玉西武ライオンズ・レディースの六角彩子内野手(30)は「体験した子どもたちは、すごく白熱してくれます。ただそれ以上に、大人の方が白熱しちゃうんですよね」と笑顔で話した。参加した報道陣の平均年齢は約35歳。この大人たちが我を忘れることはないだろう…。そう思っていた。
イチローのような、俊足巧打が求められる。基本的なルールは、1チーム5人構成、本塁からフェンスまで18メートルと狭いフィールド、守備は内野の5人だけ、投手が存在しない、打者は自分でトスを上げて手で軟らかいボールを放つ、など。大きな特徴に「本塁打、フェンス直撃の打球はアウト」がある。力自慢のスラッガーだけでは、苦戦を強いられる。
他にも打撃のルールは細かい。「バッターボックスから手前3メートル以内にバウンドさせたらアウト」。「打球がフェンスに到達しないとアウト」など。覚えることが多く、いきなり体験会をやってもグダグダになってしまうのでは…。そう思っていた。
ところが、いい意味で期待は裏切られ、体験会は大いに盛り上がった。直前までの記者会見で、りりしい表情で質問していたベテラン記者が、必死のヘッドスライディングでセーフを狙っていた。「ケガをしない程度に、ほどほどにやりましょう」と物静かに話していた記者が、二遊間のボールに必死に飛び付いていた。そして元高校球児の私も、打撃で二ゴロに打ち取られた際は悔しさから天を仰いでいた。気付けば皆、我を忘れるほど熱中していた。
打撃のルールが細かいため、大半の打者が強いゴロで野手の間を狙う。守備はファインプレーの続出で、1プレーごとに拍手が起こった。東京6大学最多48勝の名左腕で、助っ人で参加した全日本野球協会の山中正竹会長(74)が内野ゴロを丁寧にさばいた瞬間は、「おぉ~」と会場全体が沸いた。
コミュニケーションが不可欠だからこそ、会話が自然と増える。捕手が存在しないため、得点圏に走者が進むと本塁へのカバーが必要になる。「打球が来なかったら私が行きますね」「捕球したら本塁へ投げましょう」。初対面が多かった報道陣にも、最後は不思議な連帯感が生まれた。
野球をプレーする人にもオススメだ。六角内野手は「瞬時の状況判断が必要ですし、スナップスローも必要。二遊間を守る選手は、いいトレーニングになる。ウオーミングアップで取り入れるのもありですね」と話した。
試合中は陽気な音楽が流れ、ボールも軟らかくケガの心配も少ない。老若男女問わず、誰でも楽しめる新しさがそこにあった。
◆ベースボール5の主なルール
5イニング制。選手登録は8人まで(控え3人)。フェアゾーンは一辺が18メートルの正方形で塁間は13メートル。ボールは84・80グラム(NPB公式球は141・7グラム~148・8グラム)の天然ゴム100%。野球と同じ内野の4ポジションのほか、二塁ベース付近を守る中間守備(ミッドフィルダー)が存在する。バッターボックスも一辺3メートルの正方形で、助走を付けて打つことができる(バウンドするまでに足が出るとアウト)。ファウル、空振りは1度でアウト。走者はリード禁止。
世界100カ国以上でプレーされており、国内ではパラリンピック期間中に都内で体験会も実施された。22年にはマレーシア・クアラルンプールで、アジアカップが開催予定。国際大会は原則男女混合がルール(男3女2もしくは女3男2で出場)。日本代表の選考スケジュールは未定だが、今後オンラインでの選考会を実施する予定で、全日本野球協会と日本ソフトボール協会が選考する。



