ロッテは24日、村田修一氏(41)が来季の1軍打撃コーチに就任すると発表した。これまで縁のなかったロッテで、パ・リーグで、重要任務を担う。

一度だけ、その指導ぶりを取材したことがある。18年12月2日、名門東海大相模のグラウンドもほど近い神奈川・座間市民球場に姿を見せた。市内6校の中学生に野球教室を行った。

まだ現役引退した直後だった。中学生との実戦練習では自ら三塁守備に入り、セーフティーバントをジャンピングスローで阻止。三本間の封殺も成功した。二塁走者としては左前打で一挙生還。「レフト、なめんなよ!! まだ走れるんだぞ!!」と絶叫し、会場中が抱腹絶倒。最終回には「高校時代はエースだったんだぞ!!」と声高にアピールしながらマウンドにも上がり、スライダーを暴投し同点に追いつかれた。

さながら“村田劇場”と化した野球教室は、大いなる謎に包まれていた。村田コーチ以外にも杉内俊哉氏、実松一成氏ら、松坂世代を中心に豪華メンバーがそろった。会場のあちこちから「なんで呼べたの?」と声が聞こえた。

仕掛け人がいた。座間市出身で、同市体育館勤務の安斉雄虎氏(当時27)。メジャーでプレーする筒香やロッテ国吉と同期の、元DeNA投手だ。ドラフト3位で入団しながら、故障に泣かされ、現役時代は村田氏と重なったのはわずか2年。「まっすぐで後輩思い。憧れていました」と野球教室を直談判し、実現にこぎ着けた。

とはいえ当時は1軍と2軍。接点はほぼないに等しい。なぜ村田コーチはオファーを受けたのか。

「雄虎は一緒のチームだったし、セカンドキャリアで頑張る後輩には協力したいからね」

即座に豪華メンバーをそろえ、安斉氏も事の大きさに身震いしながら準備に。地元で人気の弁当店は野球教室当日が定休日だったが「何とかお願いできませんか?」と頭を下げ続け、講師の食事も確保した。

当日。野球教室は大盛況で、予定より1時間近く延長した。現役引退直後とはいえ、何かと忙しい日々。安斉氏は、村田コーチらの次の予定に支障が出ないか、ずっと心配していた。そんな思いを知ってか知らずか。控室となった中学の教室に、村田コーチはどしっと腰を下ろした。

「雄虎、ありがとう。せっかくだから、食べて行こうかな」

勢いよく、空っぽにしていた。

豪快で情にあつい。ロッテの若手は素直で穏やかな選手が多いとされる。どう響いていくか。

吉井新監督は、個々の仕事領域をリスペクトするタイプ。今季、やや意思疎通にスムーズさがなかったロッテベンチ。どう空気を変えていくか。

通算360発の技術伝承が最大のミッションだ。とはいえ男・村田のエネルギーは、ロッテに足りなかったものを埋める気がする。【ロッテ担当=金子真仁】

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