ボクシングWBC世界バンタム級1位の那須川天心(28=帝拳)が自ら編集長を務める「天心新聞」を日刊スポーツの読者にお届けします。

9月27日、トヨタアリーナ東京で同級王者井上拓真(30=大橋)との再戦が迫っています。昨年11月の初対決ではプロキャリア初の黒星を味わい、世界王座獲得を逃しました。その後、ファンとの交流を通じ、応援の熱量が変わったと実感しているそうです。第9回のテーマは「対等」です。

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今の僕のファンって根強い人が多いなって思う。昨年11月に無敗でなくなった。実感はないけど、離れるファンもいたんじゃないかなと。ただ、負けたことによって本当に応援してくれる人も分かった。街でも声をかけられるけど、その熱量が上がってきたと感じる時が多い。これまでは「いつも応援してます」ぐらいだったけど、今は「勇気をもらっています」と言われる。格闘技をやっているとかやっていないとか関係なく応援してくれるのが僕のファンに多い。僕の人生を見てくれている。

3月にファンとの決起集会をやりました。僕を契機にボクシングを見始めた人も多かったので、みんなでどういう風に盛りあげていくか話しました。ワイワイやるイベントじゃなくて、本当に集会で。そこで負けた後の話とか、負けてみてどうだったとか、復帰に対してどう思ったとか。あんまり表で話さないことも言ったかな。

ファンなら知りたいじゃないですか。知りたい人は「何でこういうことを言っているのか」と言葉だけじゃなく意図を読み取ろうとする。知ろうとしない人は言葉だけを切り取っていろんなことを判断するから、意図や真意を読み取ろうとしてくれないのかなと。それで僕の周りには「分からず屋さん」も多いのかもしれないし(笑い)。

集会に来てくれた人に意見も聞きましたよ。本当にいろいろな意見を聞きましたし。ただすべてを通すのでなく、話を聞いて違うことは違うと意見も言ったし。ざっくばらんにというか、本当に前に進む会話ができたというのがありましたね。ボクシング会場で「どうやって応援したらいいか分からない」という声もあったし。

やっぱり格闘技とは観客の声の出し方は違うと思うので。ボクシングは声を出しちゃいけないみたいな感覚もあったみたいで。「どう出していいか分からない」という意見があったので、なら応援団長みたいな人を立ててみんなで声を出しましょうと提案があったり。集会に来てくれた100人ぐらいが声を出してくれれば熱がこもるというか。4月の試合は熱多く応援してもらったし。前回は拓真選手の応援団に「ざまぁ」って思われただろうけど今回はそうはさせないよと。

7月に新宿で次の試合の公開会見やったけど、最後に「これ、何の意味があるんですか?」と言った。ファンには記者さんからの質問も届かない形で。自分もお祭りとかイベントをやっている立場もある。人を呼んだら、みんなが満足するようなことをしないといけないかなと思う。賛否はあるだろうけど、あれを裏で言っても何も変わらない。表で全部言わないと。嘘はつきたくないし。

公開会見が終わって残ってくれたファンにサインしました。入場の時から見て、会見の雰囲気とか、ファンの表情とか、全部察したというか。拓真選手のTシャツを着ていた人とも写真を撮りましたよ。「来てもらっている」という基本を忘れちゃいけない。その思いが人一倍強い。ファンとは常に「対等」の立場でありたいし。

よく「ファンとの距離が近い」って言われるんだけど。そういう交流は「競技と本筋が違う」と避ける選手もいるし、そのやり方もありだと思う。ただ僕はこういうやり方もあると提示しているだけ。僕は人と話すことが基本好きだし、実際に触れ合うのは大事。だって行動しないでSNSや本だけで見たものってすぐに忘れたりする。実際に見てないから忘れることが多い。自分で時間を使って動いたものって必ず残る。人と触れあって思いを伝えたいし、応援されれば力に変わるのが僕なんで。もし僕が応援する立場だったら思いを乗せられない人は応援できない。その選手がどういう思いでやっているとか、そういうことを知っているから見る側も面白いと思う。点でなく、線でみてほしいというのがあるから。

「ファンがいて自分がいます」って言うじゃないですか。でも僕がいないと僕のファンもいないと思う。「自分のため」という思いが強くなれば強いほど、ファンが来てくれると感じるし。それが僕の持論。自分の「核」をしっかりと強めていく。そうすれば応援してくれる人が増えてくれるんだなって。負けてからすごく思うようになって。そこを強めている感覚がある。それを発揮するのが今回の試合かな。拓真選手より自分に負けたくない。

やっぱりファンと話すと同じ矢印、同じ方向を向けるのがいい。共通言語みたいなことが増えるし、増えたかなという実感がある。競技だけで判断しろって難しいと思うし。僕は応援してもらっている人には詳しく説明したいから。今の時代、何かと言語化を求められるし、本当に応援してくれる人には言葉で伝えたい。寄り添うじゃないけど同じ目線が大事かなと。ファンと同じ熱量と目線で拓真選手とリマッチできる。それが楽しみでならないんだよなあ。(「天心新聞」編集長・那須川天心)

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